みんながパソコン大王
雑談<NO.192>

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NO 表題 起稿 起稿日
雑談NO.193
1937 地震 ABC 19/12/19
1936 子角山(ねずみやま)の紅葉は、まだ綺麗でした 磯津千由紀 19/12/19
1935 現代の貧困、数題 磯津千由紀 19/12/18
1934 「一年中セミが鳴いてるよう」加齢性の耳鳴りとは 今日のセカンドオピニオン(毎日新聞「医療プレミア」、4月26日)」 磯津千由紀 19/12/18
1933 調剤薬局、数題 磯津千由紀 19/12/17
雑談NO.191

NO.1933 調剤薬局、数題<起稿 磯津千由紀>(19/12/17)


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/17 (Tue) 17:49

副題=「いつもの処方薬」きょうは値段が高い理由 あなたのおくすり手帳 高垣育(毎日新聞「医療プレミア」、18年10月10日)

 こんばんは。


 薬局によって地域医療加算の有無が違ったり、薬局に行く時刻や曜日によっては時間外加算が付いたりします。
 また、一般名で処方された場合、薬局によって何処のメーカの薬が調剤されるかはさまざまです。


> お薬代の基本と薬剤師の仕事(前編)

> 「お会計間違ってない? いつも薬をもらう薬局より高いんだけど」。薬局で働いていると時々患者さんから聞かれます。逆に「あら、今日はお薬代安いのね」と言われることも。なぜ同じ薬なのに薬局によって会計が違うのでしょうか。その理由は「薬そのものの価格」と、「薬局に処方箋を持ち込むたびにかかる料金」にありました。現役薬剤師として患者と対話しながら、フリーライターとしても活動するパラレルキャリアの高垣育さんが、私たちに身近なお薬の話題をつづる新連載「あなたのおくすり手帳」の始まりです。第1回は「薬の値段と薬剤師のおしごと」について。前後編に分けてお届けします。

> 「薬そのものの価格」によって薬局での支払額が変わるケースは以下の二つが考えられます。

> (1)先発医薬品かジェネリック医薬品か

> 薬局で処方箋を出したとき、「先発医薬品とジェネリック医薬品のどちらにしますか」と聞かれたことはありませんか? 「先発医薬品」は製薬会社が新しく薬となる候補を見つけ出し、その成分の有効性や安全性を確認したのちに、国の承認を受けて発売される医薬品です。一つの新薬が患者さんのもとへ届くまでに、長い時間と膨大なお金がかかっています。製薬会社は開発に要したこれらの費用を回収しなければ次の新薬開発ができないため、かかった費用をもとに価格を決めて販売しています。

> 一方「ジェネリック医薬品」は、先発医薬品の特許が切れた後、同じ有効成分を使っていて、効果や安全性が先発医薬品と同等であることを国が厳しく審査し、承認した医薬品です。先発医薬品と有効成分が同じであり、効果や安全性が確認されていることから開発費用やコストを大幅に抑えることができます。そのため、先発医薬品よりも低価格にすることができます。複数の製薬会社が販売しています。

> たとえば痛み止めのロキソプロフェンナトリウム水和物錠60mgは、先発医薬品の「ロキソニン錠60mg」(第一三共株式会社)は1錠14.5円ですが、ジェネリック医薬品の価格は5.6~9.6円で、1錠あたり4.9~8.9円の差があります。(参考)

> (2)ジェネリック医薬品同士の価格差

> ロキソプロフェンナトリウム水和物錠60mgのジェネリック医薬品の価格をご覧になって「あれ?」と思った方がいるかもしれません。実は薬の価格差は先発医薬品とジェネリック医薬品の間だけではなく、ジェネリック医薬品の間にもあります。

> 薬局の窓口で「お会計が高くなった」というAさん(60代、男性)の例をみてみましょう。Aさんは高血圧で「アムロジピンベシル酸塩錠5mg」という薬を飲んでいます。前回はB薬局で薬をもらい、今回はC薬局で薬をもらいました。

> アムロジピンベシル酸塩錠5mgのジェネリック医薬品を販売している会社はなんと数十社に上り、錠剤を適切な大きさにしたり、唾液や少量の水でも飲める「口腔(こうくう)内崩壊錠」にしたりするなど工夫しています。価格は一律ではなく、一番安いジェネリック医薬品は1錠12.9円、高いものは1錠22.7円と、9.8円の開きがあります。

> お薬手帳によると、1カ月前にB薬局で調剤されたアムロジピンベシル酸塩錠5mgは、C薬局で調剤したのとは異なるメーカーの製品で1錠12.9円。今回調剤した薬は1錠22.7円でした。

> 「どこの薬局でも一番安いのを出してくれたらいいのに」と思いますよね。薬局では、ジェネリック医薬品を採用する際、患者さんの経済的な負担が軽くなるように配慮していますが、それ以外にもさまざまなことに考えをめぐらせています。

> たとえば、患者さんによってはこれまでに使っていた先発医薬品と見た目が大きく変わると混乱するため、錠剤の形やシートが似ているかどうかも考慮します。その結果、各薬局が最適と判断して採用したジェネリック医薬品はそれぞれ違うため、値段も変わり、同じ成分の薬が同じ日数分処方されているのに、窓口での支払額に差が出るのです。


> 薬そのもの以外にかかる「調剤技術料」とは

> 薬局での支払額には“薬そのもの”のほかに「調剤技術料」が含まれています。「薬をもらいに行くだけでお金がかかるのか」と驚く人がいるかもしれません。いったい何にかかる料金なのか気になりますよね。分かりやすくするために、スーパーマーケットの商品にあてはめて考えます。

> スーパーマーケットで魚を買う時、刺し身用の柵300gと、すでに刺し身になっている300gでは価格が異なります。お客さんが食べやすいように刺し身に加工した手間賃がプラスされるため、加工済みの刺し身の方が高価です。

> 薬局でも同じです。待合室から見ていると、薬剤師の仕事は「薬を棚から出してハサミでシートを切って出すだけ」に見えるかもしれませんが、調剤室では患者さんに安全に薬を飲んでもらうための確認や、薬を飲みやすく、使いやすくするための作業をしています。こうしたさまざまな作業にかかるのが調剤技術料です。

> また、スーパーマーケットにはお客さんが欲しいものを必要なだけ選べるよう、さまざまな種類の商品が並んでいます。普段あまり意識しないかもしれませんが、商品の価格には商品そのものの値段にプラスされた、あらゆるコストが含まれています。仕入れた商品を保管する場所にかかる家賃、保管にかかる冷蔵庫などの購入費やメンテナンス代などです。薬局でこのコストに相当するのが調剤技術料のうち「調剤基本料」と呼ばれるもので、薬の不足が出ないように在庫を確保したり、薬を適切な環境で管理したりするためにかかる費用です。実は、この調剤基本料も薬局ごとに異なり、一律というわけではありません。立地や処方箋の受付回数など国が定めた基準により、4種類の金額に分けられています。これも「同じ薬なのに支払額が違う」理由となっています。


> 現在はお薬手帳を提示すると40円お得!

> 「お薬手帳はいらない。だって持ってきたらお会計が高くなるでしょう?」

> 薬局でたまに患者さんから言われますが、これは古い情報です。2016年までお薬手帳を必ずしも必要としない患者さんは、お薬手帳に調剤日や薬の名称、用法、用量などを手帳に記載しない場合に会計が安くなる時期がありました。 現在は、国が定めた立地や処方箋の受付回数などの条件を満たした、たとえば皆さんのご自宅の近所にある個人経営のような薬局でお薬手帳を提出した場合、3割負担の人は40円安くなります。

> ただし、お薬手帳を持参したらいつでも40円安くなるわけではありません。「6カ月以内に同じ薬局に処方箋を持ってきていること」という条件を満たす必要があります。いつも薬局の混雑具合を見て、あちこちの薬局で薬をもらっている人、病院ごとに薬局を変えている人は、この恩恵を受けることができません。

> 定期的に通院している人にとって、そのたびに自分が支払う負担額を考えるのはとても大切なことです。薬局を選ぶ際、負担額の他にどのような点を考慮すればよいのか、次回お伝えします。

>   ×   ×   ×

> (参考)

> 薬価基準点数早見表 平成30年4月版(じほう)

<参考=「「いつもの処方薬」きょうは値段が高い理由 あなたのおくすり手帳 高垣育」(毎日新聞「医療プレミア」、18年10月10日)>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/17 (Tue) 22:48

副題=“かかりつけ薬剤師”があなたの命と健康を守る あなたのおくすり手帳 高垣育(毎日新聞「医療プレミア」、18年11月5日)

 こんばんは。


 私の経験では、おくすり手帳(当地の一部薬局では、かかりつけ手帳)を良く見て呉れる薬局もあれば殆ど見ない薬局もあります。
 調剤時の薬の説明の丁寧さにも大きな差があります。
 で私は、少々遠くて待ち時間も長い薬局を、かかりつけにしています。


> お薬代の基本と薬剤師の仕事(後編)

> 前回、処方薬には効果や安全性が同等の薬が複数種類あることや、薬局ごとに加算される調剤基本料が違うことによって、薬局での支払額が異なることをお伝えしました。また厚生労働省は薬局の「かかりつけ機能」、つまり患者さんが住み慣れた地域で、薬や健康に関していつでも気軽に相談できる役割の強化を推進しています。これらを踏まえ、今回は薬局選びのポイントを紹介します。

> まず一つ目。薬や健康のことで不安や疑問があったら、散歩や買い物のついでに立ち寄って相談できるような“生活の動線上にある”薬局がおすすめです。

> 厚生労働省の「平成29年度衛生行政報告例の概況」によると、2017年度末の全国の薬局数は5万9138軒。18年9月度のコンビニエンスストアの数が5万5463店なので、薬局は私たちにとって身近な存在であることが分かります。(参考1)

> 近所にいくつかコンビニエンスストアがある方は「店員が感じよい」「欲しい物が欠品することなく並んでいる」「清潔感があって居心地がよい」など、さまざまな点を比較して、ひいきのお店を決めていると思いますが、薬局も同じです。通いやすさはもちろん、薬剤師や医療事務員などのスタッフとの相性や話しやすさ、薬が欠品することはないかなどを考え合わせて決めるとよいでしょう。


> 薬剤師がお薬手帳をしっかり確認しているかどうか

> 「薬の準備をしている薬剤師がお薬手帳をしっかり確認しているか、必要に応じてコメントなどを記入しているかどうかも、薬局を選ぶ時の重要なポイントに挙げてよいでしょう」

> そう教えてくれたのは、薬剤師でつくる「おくすり手帳研究会」の世話人を務める田中秀和さんです。薬剤師は患者さんの健康を守る医療従事者として、その患者さんが使っている薬の情報を可能な限り収集し、把握する役割も担います。お薬手帳はそのために欠かせないツール。お薬手帳を毎回確認することは「この患者さんの薬は自分が一番よく把握している」という薬剤師としての自負と覚悟の表れだと言います。

> 「他の薬局や病院内で調剤された薬でも、検査値がよくなって薬が減ったり、飲まなくてもよくなったりした時、それに気づいて一緒に喜んでくれる薬剤師がいれば、ぜひ信用していただきたいと思います」(田中さん)


> お薬手帳がきっかけでつらい症状が改善

> 田中さんにはお薬手帳がきっかけで、患者さんが悩んでいた「手のしびれ」の改善につながったことがあるといいます。

> 70代の男性は手がしびれて感覚が鈍く、草刈りをしていたら鎌で手を切ってしまい、近くの医院で受診。けがの処方薬をもらいに、田中さんの薬局を訪れました。男性には手のしびれの他に糖尿病があり、それぞれ別の医療機関で治療を受けていましたが、各医師には他の医療機関で治療中の病気や症状を伝えていなかったそうです。

> 「手のしびれは糖尿病の合併症による神経障害のせいではないか」。そうピンときた田中さんは、お薬手帳にその旨を記載して男性に渡し、「次回病院に行った時に糖尿病の担当医や看護師にコメントを見てもらってください」と説明しました。その後、糖尿病の担当医から合併症によるしびれを改善するための薬が処方され、けがの原因となった症状は改善したそうです。

> 少しでも早く良くなりたい気持ちから、症状ごとに専門医を受診する人が多いかもしれません。その場合、使っている薬すべてを定期的に見直すことが大切です。そのためには、薬の名前が正確に記録されたお薬手帳が欠かせません。この事例では、薬剤師がお薬手帳を活用して各医療機関の薬を見直し、患者さんが治療中の病気と使っている薬の全体像を把握しました。それが功を奏し、手のしびれというつらい症状を改善することができたといえます。

> お薬手帳がない場合、薬剤師は現在使用中の薬を患者さんに尋ねます。ところが薬を本当は使っているのに「何も飲んでいない」と申告する人や、内服薬のみを伝える人も多く、使用薬をすべて把握するのに時間がかかる場合があります。その点、お薬手帳を活用すればすぐに全体像を把握できます。前編で、お薬手帳を提示すると40円安くなることを紹介しましたが、お薬手帳には活用すれば会計が安くなること以上の、お金に代えられないメリットがあります。


> 80代女性の転倒の原因を見抜いたことも

> そうは言っても「薬剤師は本当に薬代に上乗せして調剤技術料(薬を安全に飲みやすくするための作業にかかる料金。調剤基本料を含む)を支払うほどの仕事をしているの?」と厳しい目を向ける人がいるかもしれません。田中さんが経験した別のケースを紹介しましょう。

> 薬局に片頭痛の薬をもらいに来た80代女性。1カ月に1度くらいのペースで転倒を繰り返すため、気になったのでよく話を聞いてみたところ、本来の薬の飲み方とは違う飲み方をしていたことが判明しました。

> 女性が飲んでいた薬は粒の大きな錠剤で、神経が過剰に活動する状態を落ち着かせ、結果的に片頭痛の予防に働くというものでした。効果を長時間安定して持続させるために特殊な作りになっていて、服用の際は「決してかみ砕かないこと」と注意される薬です。

> ところが、女性は錠剤が大きくて喉に詰まる感じがするからと、かみ砕いて飲んでいました。良くないことと理解していながらも「せっかくお医者さんが処方してくれているので、申し訳なくて言えなかった」と打ち明けたそうです。

> 田中さんは医師に状況を報告し、処方を同じ成分の粉薬に変更できないか相談しました。その結果、提案通りの内容に変更され、女性はその後転倒することもなくなりました。田中さんによれば、本来とは異なる飲み方をしたせいで薬が短時間のうちに体内に取り込まれ、過度に神経活動が抑制されてフラつきにつながった、と考えられるそうです。


> 薬剤師の指摘で適正化される薬剤費は570億円!?

> このように薬局の薬剤師が薬学的な判断に基づき、処方箋の内容について医師に問い合わせた結果、個々の事例では必ずしも薬剤費が減少するわけではありませんが、全体で見ると、処方内容が見直されて適正化される薬剤費は約570億円、という試算が報告されています。(参考2)

> 薬剤師は患者さんに安心・安全に薬を飲んでもらうため、そして住み慣れた街で患者さんやそのご家族が元気に暮らし続けていくため、親身になって健康を支えます。近所に頼れる薬剤師がいたら、これ以上役立つ「クスリ」はありません。まだ若くて元気だから病院は年に1回行くかどうかという人も、定期的に通院している人も、何でも気軽に聞けて頼れる薬剤師を生活動線上に見つけておけば、いざという時にきっと大きな助けとなってくれます。

>   ×   ×   ×

> (参考1)日本フランチャイズチェーン協会 コンビニエンスストア統計データ

> (参考2)平成30年度診療報酬改定の概要 調剤(46ページ)

<参考=「“かかりつけ薬剤師”があなたの命と健康を守る あなたのおくすり手帳 高垣育」(毎日新聞「医療プレミア」、18年11月5日)>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/18 (Wed) 23:21

副題=安いだけじゃない「ジェネリック薬」がお勧めな理由 あなたのおくすり手帳 高垣育(毎日新聞「医療プレミア」、4月2日)

 こんばんは。


 薬局は、ジェネリック薬を出すと金銭的メリットがあるが、患者のためを思ってジェネリック薬を勧めるケースもあるということです。


> ジェネリック医薬品を知る(前編)

> 先月、ジェネリック医薬品メーカーの沢井製薬が製造する胃炎・胃潰瘍治療剤「エカベトNa顆粒66.7%『サワイ』」からドーピング禁止薬物「アセタゾラミド」が検出され、自主回収するという報道がありました。報道を見て、ジェネリック医薬品の安全性や効果について心配になった方もいるでしょう。今回はジェネリック医薬品を選択した場合に、少しでも安心して使っていただくために、先発品との違いや安全性・有効性など「ジェネリック医薬品の基本」についてお伝えします。


> ジェネリック医薬品の安全性と効果は先発医薬品と同じ?

> ジェネリック医薬品(後発医薬品)については、この連載の「『いつもの処方薬』きょうは値段が高い理由」でもお伝えしましたが、新薬(先発医薬品)の特許が切れた後、同じ有効成分を使って製造され、効き目や安全性が先発医薬品と同等であることを国が厳しく審査し、承認した医薬品です。開発費用が抑えられるので、低価格で手に入れることができます。

> 沢井製薬はドーピング禁止薬物が混入した経緯を調査中とした上で、「原薬メーカーの製造段階で混入したのではないか」と発表しました。その上で「混入していてもごく微量で製品の有効性・安全性に影響を与えるものではなく、健康被害を及ぼすものではない」とし、スポーツ競技者に対しては調査結果が判明するまで服用を控えるよう求めています。

> ここで「原薬メーカー」という聞き慣れない言葉が出てきましたね。「原薬」とは薬の有効成分である化学物質のことで、今回の場合は「エカベトナトリウム水和物」という成分を指します。原薬メーカーは医薬品メーカーとは別にあります。

> 私たちが使う医薬品は、先発医薬品メーカーの薬もジェネリック医薬品メーカーの薬も「原薬」と添加物を混ぜ合わせて作られています。ところが、どのメーカーが作った添加物や原薬を使うかは、先発医薬品メーカーとジェネリック医薬品メーカーでは必ずしも同じではありません。

<表省略>

> この表を見ると、両者の間には「有効性や安全性に違いがあるのではないか」と思うかもしれません。それでもジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を同量含み、効能・効果、用法・用量が同一となるように作られています。

> 最初に、ジェネリック医薬品については「効き目や安全性が先発医薬品と同等であることを国が審査、承認している」と説明しました。その審査はもちろん、原薬や添加物などの違いを踏まえて行われます。つまり国は「違いがあっても、この薬は先発医薬品と同等だとみなせる」と判断したのです。

> 参照:厚生労働省「ジェネリック医薬品への疑問に答えます~ジェネリック医薬品Q&A~」


> ここでのポイントは「同等」という言葉です。同じデータをみても、人によっては「同等」とは判断しない場合があります。

> たとえば、医師がジェネリック医薬品への変更不可を指示する場合があります。処方箋には変更不可欄があり、ここにチェックや「×」が付いていると原則として変更できません。厚生労働省が行った「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査」によると、変更不可欄にチェックした処方箋の発行経験が「ある」と答えた医師は40%以上に上りました。

> このうち、先発医薬品を指定する場合の理由をみると「患者からの希望がある」が最も多く、「後発医薬品の品質に疑問がある」▽「適応症が異なる」――が続きました。「その他」として「外用剤の場合、基剤が異なる」「先発医薬品の味が優れている」などの回答も挙がりました(「基剤」とは塗り薬に含まれる成分で、薬を塗りやすくする、有効成分を吸収されやすくするなどの役割があります)。

> 特に「その他」に挙げられた理由をみると、効果や安全性が同等でも「患者さんの使い心地」という薬物療法の継続に欠かせない大切な要素も、同等とは限らないと判断する場合があることがうかがえます。


> 安くてもジェネリックを使いたくない患者さんが1割

> こうした疑問点の指摘もあるのですが、それでも読者の方は薬局で「ジェネリック医薬品に変更できるお薬があるので、変更しても良いですか?」と聞かれることがあるでしょう。

> 患者さんにとってジェネリック医薬品は、使い慣れた先発品と名前が違って分かりづらく、シートや錠剤の色や形状が異なって混乱し、値段が安いということ以外にさほどメリットがあるとは感じられないかもしれません。

> 実際、中央社会保険医療協議会の調査によると、患者さんにジェネリック医薬品の使用について意向を尋ねたところ、「いくら安くなっても使用したくない」と回答した割合は12.0%と報告されています。理由は、「ジェネリック医薬品の効き目(効果)や副作用に不安があるから」が最も多く、次いで「使い慣れたものがいいから」▽「報道等でジェネリック医薬品の品質、効果等に関して良い情報を聞かないから」――でした。


> 薬剤師がジェネリック医薬品を勧める理由

> このように、ジェネリック医薬品の使用を嫌がる患者さんもいるのに、なぜ薬剤師は勧めてくるのでしょうか。

> 理由は二つあります。一つ目は、厚生労働省がジェネリック医薬品の使用を推進していることです。同省は2020年9月までにジェネリック医薬品の使用割合を80%にすることを目標に掲げました。その背景には、将来にわたって医療の質を落とさず国民皆保険制度を持続させるため、限りある医療資源を有効活用したいという意図があります。

> この後押しのため、18年の調剤報酬改定の際、薬局に対していわゆる“ごほうび”と“ペナルティー”が定められました。ごほうびは、ジェネリック医薬品の調剤数量の割合が高いほど調剤報酬を多く得られるというものです。ジェネリック医薬品の調剤数量割合が75%以上の場合は18点(180円)、80%以上の場合は22点(220円)、85%以上の場合は26点(260円)が加算されることになりました。ペナルティーは特定の条件を満たす薬局以外で、ジェネリック医薬品の調剤数量割合が20%以下の場合に調剤基本料という報酬から2点(20円)が減算されるというものです。

> 「ペナルティーを受けたくないからジェネリック医薬品を勧めている」という事情が薬局側に全くないとは言い切れません。しかし、薬剤師はお金のためだけにジェネリック医薬品を勧めているわけでは決してありません。

> 二つ目の、そして本当に重要な理由は、患者さんにとって、ジェネリック医薬品の方が先発医薬品より「優れている」と考えられる場合があることです。たとえば、ジェネリック医薬品の中には、高齢の患者さんなどがシートから錠剤を出す際につまみやすい粒の大きさにしたり、お子さんがより好む味に改良されたりしたものがあります。また、睡眠薬の一部は、患者さんが夜中にトイレで目覚めることのないよう、少ない水で服用できるように作られています。実は、同じ先発医薬品に基づいたジェネリック医薬品の中にもさまざまな種類があって、値段や有効成分以外の特徴が違うのです。

> 次回は、こうしたジェネリック医薬品そのものに施されている工夫と、数あるジェネリック医薬品の中から薬剤師が薬局で採用する薬をどのように選んでいるかの二つの視点から、薬物治療におけるジェネリック医薬品の役割についてお伝えします。

<参考=「安いだけじゃない「ジェネリック薬」がお勧めな理由 あなたのおくすり手帳 高垣育」(毎日新聞「医療プレミア」、4月2日)>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/21 (Sat) 23:57

副題=「ジェネリック嫌わないで」工夫や改良重ねた薬も あなたのおくすり手帳 高垣育(毎日新聞「医療プレミア」、5月7日)

 こんばんは。


 ジェネリック薬は先発薬に対して改良されてることが多いといいます。
 先発薬の薬価が安いと、ジェネリック薬が作られないのが、私の不満です。


> ジェネリック医薬品を知る(後編)

> 薬局の窓口で患者さんに「ジェネリック医薬品で調剤できるお薬が出ているので変更してもよろしいですか」と聞くと「絶対に先発医薬品で」と言われることがあります。前回は、約10人に1人が、「いくら安くなっても使用したくない」とジェネリック医薬品を敬遠している現状と、一方でジェネリック医薬品の方が先発医薬品より「優れている」ケースがあることをお伝えしました。今回はその具体例と、実際に薬剤師はどのような場合にジェネリック医薬品を勧めているのかを解説します。


> 既存の薬の「もっとこうだったら」を実現

> ジェネリック医薬品は先発医薬品と同じ有効成分を同量含み、効能・効果、用法・用量が同一となるように作られた薬です。ところが前回お伝えした通り、薬を作る過程でどこのメーカーの原薬や添加物を使うかは、先発医薬品とジェネリック医薬品で、必ずしも同じではありません。では、なぜ異なる添加物を使って薬を作るのでしょうか。

> 実は、ジェネリック医薬品メーカーは、特許の問題で、先発品とは別の添加物を使わざるを得ないことが多いのです。ジェネリック医薬品は通常、先発医薬品の特許が切れた後に発売されますが、「切れた」のは有効成分に関する特許だけで、添加物などに関連する特許は切れていないことがよくあるからです。

> でも「別の添加物だから悪い」わけではありません。それどころか、添加物の変更をうまく利用して、薬を改良することもできるのです。

> ジェネリック医薬品メーカーは、特許期間中に新薬を使った人の「もっとこうだったらいいな」という声をたくさん集めることができます。その声をもとに先発医薬品をうまく改良し、付加価値の高い薬を患者さんに提供するのが、ジェネリック医薬品メーカーの腕の見せどころです。


> ジェネリック医薬品のさまざまな付加価値

> 具体的な改良はさまざまですが、よくあるのは(1)飲みやすくする(2)扱いやすくする(3)間違いにくくする――の三つです。

> たとえばジェネリック医薬品メーカー大手の日医工(本社・富山市)は、3歳未満の乳幼児でも飲みやすいように「エアープッシュゼリー」という形態のゼリー剤を開発しました。これはスティックタイプのゼリー剤で、2層に分かれたスティックの中にゼリーと空気が封入されています。空気部分を押すと弱い力でもゼリーを押し出せ、薬剤が包装内に残りづらく、決められた量をきちんと飲めるようになっています。

> また、別の大手メーカーである沢井製薬(同・大阪市)は、睡眠導入剤「ゾルピデム酒石酸塩」の「口腔(こうくう)内崩壊錠」を開発しました。口腔内崩壊錠とは、口の中で溶けるため、少ない水で飲める錠剤のことです。睡眠導入剤にこの工夫を取り入れることで、睡眠前の水分摂取量が少なくて済み、「夜中にトイレに行きたくなるかもしれない」という患者さんの不安を取り除きます。

> 錠剤に製品名を印刷したり、色を変えたりして他の薬と間違いにくくしている薬もあります。東和薬品(同・大阪府門真市)は国内で初めて錠剤に2色で製品名を印刷し、識別しやすくしました。また、薬のシートや包装への表示を工夫している製品もあります。

> 一方で、先発医薬品と見た目ができるだけ似ている方が良いというニーズもあります。包装や錠剤の見た目がガラリと変わると、混乱してしまう患者さんもいるからです。そのため、できるだけ先発医薬品と見た目の違いがないよう工夫したジェネリック医薬品もあります。


> 先発医薬品と添加物も同じ「オーソライズドジェネリック」も

> さらにジェネリック医薬品の中には、特許を持つ先発医薬品メーカーから許可を受けて、他の会社が作っているものがあります。これを「オーソライズドジェネリック(AG)」と言います。この場合、許可があるわけですから、通常のジェネリックとは異なり、原薬や添加物、製造方法など、さまざまなことを先発薬と同じにできます。

> ただし、何がどこまで同じかは、それぞれのAGによって違います。「原薬と製造方法は先発薬と同じ」とか、「製造方法は同じ」だが原薬は異なる、というAGもあります。

<表要略>

> もし「AGは原薬や添加物も先発医薬品と同じもので作られているから」と考えて、ジェネリック医薬品の中でも特にAGを希望する場合は、薬局で「どのAGに」変更するのかを確認したほうが良いでしょう。


> 患者の悩みに対応した「改良ジェネリック」をお勧め

> では、ジェネリック医薬品は薬局でどのように活用されているのでしょうか。薬剤師の山本雄一郎さんは「患者さんから薬が飲みづらい、扱いづらいという訴えがあったとき、私たち薬剤師はその解決法の一つとしてジェネリック医薬品の使用を提案する場合があります」と話します。山本さんは、熊本大学薬学部臨床教授として学生に薬局実務などを教える傍ら、アップル薬局(熊本市)代表取締役を務めています。

> 薬局では、高齢の患者さんから「錠剤をうまくつまめない」という訴えを聞くことが多いそうです。そこで薬を飲む場面をよく観察したところ、「薬をシートから手のひらに出し、1粒ずつつまんで飲み込む」という動作をしており、そのときに薬が小さ過ぎる、つまみづらい形をしているなどの理由でうまく手に取れないと分かりました。

> さらに、薬の粒が小さいと、複数の薬をまとめて一袋にする「一包化」をしても、袋の中に薬が残ったままなのに気づかず、飲み残すという問題もあります。このような場合、高齢者でも扱いやすいよう、粒を大きくするなどの工夫がされたジェネリック医薬品(口腔内崩壊錠など)の使用を勧めるといいます。口腔内崩壊錠には粒が大きいものもあります。

> また、糖尿病の患者さんでは「シックデイ」と呼ばれる体調の悪い日に、血糖値を下げる薬の量を、自分自身で加減することがあります。見た目がそっくりな白い錠剤ばかりを何種類も飲んでいる人だと、どの薬を飲まずにおくのかが分かりづらく、調整を誤ってしまう恐れがあります。そこでアップル薬局では、薬を識別しやすくするために、形や色に特徴があるジェネリック医薬品を患者さんに勧める場合があるそうです。

> このように、薬剤師はそれぞれの薬の特徴を踏まえたうえで、患者さんの困りごとを解決し「薬物療法の助けになる」と判断した場合に、ジェネリック医薬品の使用を提案することがあります。ジェネリック医薬品を薬局で勧められたら、その理由を薬剤師に尋ねてみると良いかもしれません。きっと薬を飲む人のメリットを考えた理由が隠されているはずです。

<参考=「ジェネリック嫌わないで」工夫や改良重ねた薬も あなたのおくすり手帳 高垣育」(毎日新聞「医療プレミア」、5月7日)>


NO.1934 「一年中セミが鳴いてるよう」加齢性の耳鳴りとは 今日のセカンドオピニオン(毎日新聞「医療プレミア」、4月26日)」<起稿 磯津千由紀>(19/12/18)


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/18 (Wed) 00:59

 こんばんは。


 二六時中「ジー」で、私には高級オーディオ機器は宝の持ち腐れです。不規則ではありません。


≫ 【Q】「キーン」「ジャー」という、音質や音程の異なる耳鳴りがします。鳴り方は不規則で、2~3分おきなど周期的に出現することもあり、気が狂いそうです。(大阪府、男性、70歳)

≫ 【A】加齢による耳鳴りは、耳の最も内側にある、カタツムリの形をした場所(蝸牛(かぎゅう))が関係しています。神経細胞が並んでいる蝸牛は空気の振動である音を電気信号に変え脳に伝える「音エネルギーの変換器」の役割を果たします。しかし神経細胞が変性し、変換がうまくいかなくなると、難聴と同時に耳鳴りを感じるようになります。

> 加齢の耳鳴りは多くの場合、「ジー」「ミーン」「キーン」といった高音系の音が持続し「一年中、セミが鳴いているよう」と表現されます。ところが、中には意外な音色を訴える患者もいます。「パチパチ」「ビリビリ」など電気がショートしたような音色で、さらに周期的(間欠的)に鳴るのが特徴です。質問者のような「ジャー」という音も同様の例と考えられます。

> こうした音は動脈硬化などにより、蛇行した血管が神経を圧迫すると起きるとされ、聞こえや平衡感覚をつかさどる「第8脳神経」に近くの血管がぶつかって発症する「神経血管圧迫症候群」の可能性があります。まれな疾患ですが、確定診断のためには、詳細な検査が必要です。

> ただ頭部のMRI(磁気共鳴画像化装置)でも診断できないことがあります。そのため大学病院などの専門性の高い施設にある聴性脳幹反応(ABR)で、左右の耳の音の伝わり方を調べた方がいいでしょう。神経の圧迫によって伝わり方の波形が違っているようなら、診断がつきます。治療には抗てんかん薬として使われるカルバマゼピン(商品名テグレトール)が有効です。

> 回答者 伊藤彰紀教授(埼玉医科大・神経耳科)

<参考=「「一年中セミが鳴いてるよう」加齢性の耳鳴りとは 今日のセカンドオピニオン」(毎日新聞「医療プレミア」、4月26日)>


【シバケン】 2019/12/18 (Wed) 01:55

当方も、耳鳴りでして。
1998年から、ですねえ。

高音域が聞こえ無いので、脳が再生してるの話もあるです。

呆けて来たら、解放されるのかと。

<参考=耳鳴りの話


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/18 (Wed) 03:36

 シバケン様、こんばんは。


 当方の場合常時ジー、数日に一回急に周囲の音が聞こえなくなって数十秒間チーンです。
 いつからかは覚えてませんが、数十年になるかと。


NO.1935 現代の貧困、数題<起稿 磯津千由紀>(19/12/18)


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/18 (Wed) 04:00

副題=特集ワイド:「アンダークラス」928万人、人ごとではない! 放置すれば社会崩壊 橋本健二・早大教授が警告(毎日新聞、4月3日)

 こんばんは。


 一億中流時代よ今いずこ。


>  貧困に陥り、抜け出すことができない「アンダークラス」の人たちは、明日の私たち--。社会学者の橋本健二・早稲田大教授(59)は、近著「アンダークラス--新たな下層階級の出現」(ちくま新書)で「現状を放置すれば日本社会は危機的状況を迎える」と警告する。【鈴木美穂】


> 日本社会は、もはや「格差社会」などという生ぬるい言葉で形容すべきものではない。それは明らかに「階級社会」--。2018年1月に出版された前著「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)で橋本さんはこう指摘した。「労働者階級」が正規と非正規労働者に分裂して出現した下層階級の存在を可視化し、大きな反響を呼んだ。

> アンダークラスとは、パート主婦らを除いた非正規労働者を指す。近著は、この下層階級を詳細に描く。

> 「バブル崩壊後、非正規労働者が増加しましたが、余剰時間を活用し、家計を助けるために働くパート主婦らもその数に含まれ、実態が覆い隠されていました。貧困から抜け出せないアンダークラスに焦点をあてる必要があると考えました」

> 橋本さんが、階級・階層研究を専門とする社会学者の研究グループによる15年の「社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)」や、自身を中心とした研究グループが実施した「2016年首都圏調査データ」など複数の調査データや官庁統計を分析したところ、日本には928万人のアンダークラスが存在し、就業者の14・9%を占めた。平均個人年収は186万円だ。

> この階級を、性別(男と女)と年齢(59歳以下と60歳以上)で四つに分類すると、「とりわけ59歳以下の男性と単身女性の貧困率が深刻でした」。

> 非正規労働者の貧困層はバブル崩壊後に生み出されたと指摘されることがあるが、橋本さんはバブルが始まった1980年代に起源があると分析する。バブルに沸く中、企業は拡大した労働需要を非正規労働者で満たした。経済の先行きを楽観してこれに応じた若者たちもおり、フリーターと呼ばれるようになった。しかし、バブルが崩壊すると、企業はフリーターを「使い捨て」に。以後、就職氷河期が続き、一度も正社員になったことがなく、昇進や昇給も経験したことのないアンダークラスが増え続えた。

> アンダークラスの人たちの未婚率は34・1%と高い。59歳以下の男性に限れば66・4%に達する。橋本さんは日本の階級を▽資本家階級(従業員5人以上の経営者ら)▽新中間階級(企業の管理職)▽労働者階級(正規社員)▽旧中間階級(農家など)▽アンダークラス--の「5層構造」で説明するが、アンダークラス以外の4階級の未婚率(17・3%)との差は歴然としている。「安心して家庭を持つことが難しい。他の階級の人たちとはライフコースが違います」

> 取材を通じて知り合った知人男性(46)=埼玉県在住=は「私自身、アンダークラスから抜け出せていません」と語る。非正規に転落して約20年。月収15万~18万円で家賃(5万7000円)や光熱費などを納めれば残りはわずかといい、帰途、スーパーで値引きの弁当を買うのが日課だ。

> 「結婚? 一度も考えたことない。できるわけないでしょ。1人で暮らすのがやっと。そんな家に嫁いでくれる女性なんていると思います? お金があれば誰だって、人とつながりを求める。ところが、外出すれば外食費がいるし、映画を見れば、そのお金も。今の生活では、とても無理ですよ」

> 福岡県で公務員の両親のもとに生まれた。地元の専門学校を卒業し、5年間は正社員として勤めたが、腹部に激痛が走る病に見舞われ、断続的に入院。自己退職を余儀なくされた。

> 自宅で療養しながら細々とアルバイトを続け、30代になって再就職を考えたが、正社員に応募しても、履歴書が戻ってくるばかり。東日本大震災後、仕事で東北に赴いた後、「流れつくように東京にやってきました」。家族とは不仲で、音信不通だ。「とにかく、ありつける仕事には何でもつこうと思うようになった。『再チャレンジ』社会にはまだ遠いのが現実。結局は、何でも自己責任になってしまいます」

> 離婚と再婚を繰り返し、アンダークラスと、他の階級を行き来する30代の女性も取材した。東京で生まれ育ち、高校を出たが新卒では就職できず、2年ほど梱包(こんぽう)のアルバイトなどで食いつないだ。両親は離死別し、親戚宅に身を寄せていたため「肩身が狭かった」。20歳ごろ、住み込みできる飲食店で働き始めると常連客と恋仲に。すぐに子供が生まれ、専業主婦に収まったが、同居のしゅうとめと折り合いが悪く、夫と不仲になった。「子供を置いてお前だけ出ていけ」と言われ、離婚届にハンを押した。

> 離婚後、別の飲食店で働き始めてほどなく、会社員の男性にプロポーズされて結婚。しばらくは幸せな日々が続いた。だが、家計のやりくりをめぐり、夫とケンカが絶えなくなった。「母親や義理の娘としてどう振る舞えばいいかが分からない。また離婚になってしまったら、この先どうしたらよいのか。人生をやり直せる気がしない」


> 共感を持って孤立防げ

> 「再チャレンジ」は、06年に発足した第1次安倍晋三政権が掲げていたが、いまだに実現していない。橋本さんは、現代社会に三つの「処方箋」を提示する。

> 「アンダークラスは、一人一人が『個』として切り離されており、社会と連帯できていません。個人加盟できるユニオンに入るなど、連帯の方法があることをまずは知ることが大切です」

> 次に、アンダークラスを「自分の問題」として考えることが重要だ、と話す。「普通のサラリーマンが病気やケガなどでアンダークラスに転落することは珍しくありません。あなた自身や、あなたの子供がそうなったら、どうしますか? 突き放すのではなく、共感の視点で解決の道筋を考えることが重要だと思います」

> 最後に、最低賃金を1500円にするよう求める。「そうすれば年収が大卒初任給並みになります」

> 生活保護世帯へのバッシングに象徴されるように、アンダークラスに対しても「自己責任論」は根強い。しかし、橋本さんは「就職先がブラック企業だったり、労働基準法を無視するような職場環境で体を壊したりすると、働き続けられない。それでも、あなたは『自己責任』と切り捨てられますか」。

> 病気、配偶者との離死別、リストラ……。「落とし穴」はすべての人の人生に開いている。橋本さんは改めてこう強調する。「決して人ごとではないのです」


> ■人物略歴

> はしもと・けんじ

> 1959年、石川県生まれ。東京大大学院博士課程修了。武蔵大教授などを経て2013年から早稲田大人間科学学術院教授。著書に「階級都市」「『格差』の戦後史」など。

<参考=「特集ワイド:「アンダークラス」928万人、人ごとではない! 放置すれば社会崩壊 橋本健二・早大教授が警告」(毎日新聞、4月3日)>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/21 (Sat) 22:28

副題=「貧困による食格差」が生む子どもの肥満やいじめ “子ども食堂”の時代-親と子のSOS- 可知悠子(毎日新聞「医療プレミア」、1月28日)

 こんばんは。


 貧困が子供に与える影響が大きいといいます。


> 子どもの貧困と肥満(前編)

> 子どもや子育てを取り巻く社会環境が大きく変化しています。経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の相対的貧困率(国民一人一人の手取り収入を順に並べ、真ん中となる人の半分に届かない人の割合)は16.1%(2012年)で、加盟36カ国中、7番目に高い数字です。収入の少ない親の割合が増え、それに伴って7人に1人の子どもが貧困状態で暮らしています。特に30代後半から40代前半の親たちは就職氷河期に就職活動を行い、安定した雇用が得られにくかった世代で、他の世代より収入が少ない傾向にあります。また、核家族が増え、地域とのつながりが減り、子育ては孤立しがちです。両親共働きが増えていますが、長時間労働の場合には家族の時間が減り、子どもたちが寂しい思いをしています。

> もちろん、親たちを責める気はありません。公的なサポートが少ない社会環境の中で、さまざまな工夫をしたり、周りを頼ったりしながら、皆さん本当にがんばって育児をしていると思います。一方で、全員が「頼れる誰か」や「頼るスキル」を持っているわけではありません。不安定雇用で働きながら育児や家事をこなす中で、立ち行かなくなっている家庭もあります。

> 私はそんな家庭の子どもや子育てを支援するために、公衆衛生学という学問分野に身を置いて研究をしています。臨床医学が個人を対象に診断や治療法を構築する学問であるのに対し、公衆衛生学は「集団」を対象に、病気の予防策を構築する学問です。これからお話しするのは、あくまで集団全体の傾向であり、皆さん一人一人のストーリーには必ずしも当てはまらないことにご留意ください。


> 家計の支出が少ないと子どもの肥満リスクが高い

> さて昨今、子どもの貧困が健康にも悪影響を及ぼすことがわかってきていますが、その中でも肥満との関連性はほぼ確立しています。

> 私の研究チームは全国の小学生と中高生を対象に、家庭の経済状況を月間の家計支出で評価して、対象を家計支出の少ない方から低・中・高の3グループに分け、肥満の割合を比較しました。その結果、中高生のうち家計支出が少ないグループでは、高いグループと比べて、肥満のリスクが3.4倍高いことがわかりました(「社会経済的地位と過体重:日本の学童期と思春期の子どもを対象とした地域ベースの横断研究」15年)。

> 一方、小学生では、家計支出の多い、少ないによって肥満の割合に差はみられませんでした。小学校のほとんど(99%)が給食を実施しているため、給食が家庭の経済状況による肥満への影響を緩和していると考えられます。

> 家庭だけではなく、国の経済状況も子どもの肥満と無関係ではありません。東京大学大学院の研究者らは、米国のリーマン・ショック(08年)に端を発した世界的な経済危機の後、日本の低所得家庭の子どもで、肥満になるリスクが高くなったことを報告しています(「世界的な経済危機、世帯収入および思春期前の過体重と低体重:日本における全国規模の出生コホート研究」15年)。

> 実は以前から、社会的に不利な状況にいる人は、経済危機のあおりを受けて健康状態が悪化しやすいことが指摘されていました。有名なのは、ロシアの研究者が03年に発表した論文「1990年代のロシアにおける社会的要因と死亡率の増加:前向きコホート研究」です。91年の旧ソ連崩壊後、特に低学歴の男性の死亡率が上昇し、その要因の一つはアルコールの過剰摂取だったと指摘しました。同じような現象が日本の子どもたちでも観察されたわけです。



> なぜ貧困の子どもは肥満になりやすいのか

> 貧困だと十分に食事がとれず、子どもがやせるのではないかと思うかもしれません。しかし、低所得家庭では肥満が多い傾向にあります。その要因として、安くて高カロリーの食品を購入しがちであることが挙げられます。

> 厚生労働省の15年度乳幼児栄養調査によると、経済的な暮らし向きに「ゆとりがない」家庭では、「ゆとりがある」家庭と比べて、魚、大豆、野菜、果物の摂取頻度が低く、菓子やカップ麺の摂取頻度が高い傾向が示されています。これは2歳から6歳の子どもがいる家庭を対象に調べた結果なので、就学前から食生活が偏っていることがわかります。


> 子どもの肥満は成人後の生活習慣病にもつながる

> そもそも、肥満の何が問題なの? と思った人もいるでしょう。肥満そのものは病気ではありませんが、子どもたちの日常生活に支障をきたしやすいことが問題です。肥満の子どもは、骨折や関節障害、月経異常、不登校やいじめによる生活の質(QOL)の低下が起きやすい傾向にあります。また頻度は少ないですが、子どもでも肥満が進むと、大人と同様に高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を合併しやすくなります。

> また、肥満の子どもの多くは、肥満のまま大人になります。特に、乳幼児や小学生の肥満と比べて、中高生の肥満の方が大人の肥満への移行率が高く、調査によっては7割を超えます。英国のヨーク大学の研究者らの報告から、肥満の先にある2型糖尿病や冠動脈心疾患などの生活習慣病にもかかりやすいことがわかっています(「小児肥満から成人肥満を予測する系統的レビューとメタアナリシス」16年)。

> また彼らは続けて発表した論文で、肥満予防は中高生をターゲットにすると効果的であると示唆しています。ただし、やせが称賛される社会風土の中、露骨にダイエットを促すことはかえって子どもたちの健康を害することになりかねません。次回以降で述べますが、肥満予防では、太りにくい生活環境を整えることが重要です。

> 勉強するにも、遊ぶにも、仕事をするにも体は大切な資本です。そして健康は「幸福な生活や豊かな人生を創っていく」という目標を達成するための、大事な資源です。低所得家庭の子どもたちが肥満になりやすいということは、彼らが健康に過ごし、自己実現していく「機会の平等」を奪われている、ということでもあります。生まれた家庭によって人生が左右されるとすれば、とても不公平ではないでしょうか。

> 次回以降は、肥満を予防するために、政策や地域の支援団体は何ができるのかをお伝えします。

>   ×   ×   ×

> (参考文献)

> 「子どもの貧困と食格差~お腹いっぱい食べさせたい」(阿部彩・村山伸子・可知悠子・鳫咲子著、大月書店)

<参考=「「貧困による食格差」が生む子どもの肥満やいじめ “子ども食堂”の時代-親と子のSOS- 可知悠子」(毎日新聞「医療プレミア」、1月28日)>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2020/01/04 (Sat) 22:07

副題=子どもの食格差生む「給食空白地帯」をなくせ “子ども食堂”の時代-親と子のSOS- 可知悠子(毎日新聞「医療プレミア」、2月27日)

 こんばんは。


 今でも小学校給食がない地域があります。個人的には、中学校給食は随分と増えたものだと思うです。


> 子どもの貧困と肥満(中編)

> 前回は、低所得の親が増える中、子どもたちの間で「食格差」や健康格差が生じている実態を紹介しました。また、低所得家庭の子どもに肥満が多いことが国内外の研究で明らかになっていることもお伝えしました。低所得家庭では野菜、果物、肉、魚類を食べる頻度が低く、安くて高カロリーの菓子やカップ麺を食べる頻度が高いためです。日々成長している子どもの食格差への対策は、“待ったなし”です。「子どもの貧困元年」と呼ばれる2008年以降、高校授業料無償化や幼児教育・保育無償化などで政策の進展がありましたが、食に関する政策は立ち遅れています。子どもたちの豊かな「食」を保障するために、政策面で何ができるでしょうか。その答えの一つが「学校給食」の完全実施です。今回は食格差対策のポイントを押さえ、給食の意義についてみなさんと一緒に考えます。


> 学校給食が食格差を縮める可能性

> 食格差対策の観点から、給食は「環境改善型の対策」です。少なくとも週5日の昼食を保障しますし、家庭で健康的な食事をとれない子どもでも、栄養バランスが良く適切な量の食事をとりながら、食と健康について学べます。

> 給食が食格差を縮小する可能性は、さまざまな研究から明らかになってきています。

> 新潟県立大学の村山伸子教授(公衆栄養学・国際栄養学)らは13年、東日本の小学5年生836人を対象に、世帯年収別(下位、中位、上位の3層)の栄養摂取量を調べました。その結果、下位層の子どもは中上位層の子どもと比べ、給食がない日は緑黄色野菜や魚介類の摂取量が少なかったものの、給食がある日は世帯年収によって栄養摂取量に違いは見られなかったことを報告しました。

> 東京大学大学院の山口麻衣さん(現・豊島区池袋保健所、管理栄養士)らは、首都圏の小学生719人を対象に、家庭の社会経済状況と子どもの野菜・果物摂取量との関連を調べました。社会経済的に恵まれない家庭の子どもは、恵まれた家庭の子どもと比べ、野菜、果物の摂取量が少なく、給食がその差を緩和していると報告しました。


> 子どもの食を保障する「完全給食」「全員給食」

> 給食は食格差を少なくする力を秘めていますが、残念ながら、すべての小中学校で実施されているわけではありません。学校給食法は、義務教育学校の給食実施と普及を自治体の努力義務としているに過ぎないからです。

> その給食には現在、「完全給食(主食、おかず、ミルク)」「補食給食(おかず、ミルク)」「ミルク給食(ミルクだけ)」の3種類があります。文部科学省によると、公立学校の完全給食実施率(人数比)は小学校で99.6%、中学校で84.1%(16年度)です。年々、中学校の完全給食実施率は上がっていますが、地域によって差があります。もちろん食を保障するのは「完全給食」「全員給食」です。

> 一部の自治体は、中学校給食を弁当との選択制にしています。選択制の東京都町田市では、市の委託事業者が作ったランチボックスを各校に配送していますが、市によると、17年度の注文率は13.2%でした。中学1年の女子生徒を持つワーキングマザーのAさんは、「周りに給食を食べる子が少なくて娘が頼みにくいと言うので、毎日頑張ってお弁当を作っています」と話します。

> 選択制にするか、小学校のように「全員給食」とするかを巡ってさまざまな意見があり、さらに設備費や委託費など財政上の問題もあって、自治体ごとに進み具合は異なるようです。義務教育課程の子どもを持たず、給食の恩恵を受けない住民の賛同を得にくいという事情もあります。

> ただ、北海道伊達市では給食センター建て替えにあたって災害時の炊き出し機能を備え、一般の人が給食メニューを食べることができるレストランを併設するなど、地域施設としての性格を持たせています。兵庫県明石市では、中学校給食を全校で始めたことをきっかけに、市内の65歳以上の1人暮らし高齢者を対象に地域のコミュニティーセンターで給食を提供しています。中学校給食実施のために、こうした試みも有効ではないでしょうか。

> 給食実施にはもう一つメリットがあります。一定基準以下の所得の家庭や、生活保護を受給している家庭は、給食費や学用品代など義務教育に関する費用を国と自治体が補助する「就学援助制度」を利用できます。給食があることで援助を受けられるのです。


> 食格差をどう解消すればいいか

> 完全給食には食格差を縮小させる可能性がありますが、すべてを解決はできません。子どもの食生活は、「個人レベル」から「国レベル」までさまざまな要素の影響を受けています。子ども自身の食に関する知識や態度(個人、家庭レベル)▽親の収入や調理時間の有無など(家庭レベル)▽家庭科教育や給食の提供(学校レベル)▽健康的な食品の入手のしやすさやファストフード店の数(地域レベル)▽食に関わる法律や、やせを礼賛する文化(国レベル)――などです。

> そこで、子どもに調理を教える「個人レベル」の対策から、子どもの食を保障する法律を整備する「国レベル」の対策まで、幅広く実施する必要があります。そしてその対策は、すべての子どもを対象とする「普遍的対策」が好ましいとされています。

> 貧困状態の子どもを対象とする「選別的対策」は、低所得者のレッテル貼りで偏見や差別を生む可能性がある▽「低所得」の線引きが難しい(支援対象を世帯年収200万円以下としたとき、201万円世帯は対象外となる)▽低所得者ほど支援情報を得るのが難しく、支援対象からもれやすい――などの問題点があるからです。

> かといって、啓発や教育など「知識提供型」の普遍的対策は、かえって食格差を広げる恐れがあります。知識提供型は、もともと高所得者で効果が高く、食生活が悪くなりがちな低所得者で効果が低い傾向があるからです。

> 高所得者は健康意識が高く、健康づくりに励む傾向があります。一方、低所得者の多くは生活するのに精いっぱいで、健康づくりに取り組む余裕がありません。食格差の解消には、学校給食に力を入れる、健康的な食品を入手しやすい街をつくるといった、「環境改善型」の方が有効なのです。

> 給食は子どもの「食」のセーフティーネットです。完全給食、全員給食を実現し、さらにさまざまな対策を取ることで、子どもたちの食と未来を守りましょう。

>   ×   ×   ×

> (参考文献)

> 「子どもの貧困と食格差~お腹いっぱい食べさせたい」(阿部彩・村山伸子・可知悠子・鳫咲子著、大月書店)


> 可知悠子

> 北里大学講師

> かち・ゆうこ 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。2006年から10年間、臨床心理士として子どもや女性のカウンセリングにあたる。帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座助教、日本医科大学衛生学公衆衛生学教室助教を経て、18年4月から北里大学医学部公衆衛生学単位講師。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室客員研究員、国立成育医療研究センター社会医学研究部共同研究員、首都大学東京客員准教授。共著に「子どもの貧困と食格差~お腹いっぱい食べさせたい」(大月書店)。自身も3歳児の子育て中。労働者とその子どもの健康の社会格差をテーマに研究を行っている。

<参考=「子どもの食格差生む「給食空白地帯」をなくせ “子ども食堂”の時代-親と子のSOS- 可知悠子」(毎日新聞「医療プレミア」、2月27日)>


【磯津千由紀(寫眞機廢人)@ThinkPad T520(Win10Pro64bit)】 2020/01/24 (Fri) 20:13

副題=「子どもの栄養状態改善」存在感増すフードバンク “子ども食堂”の時代-親と子のSOS- 可知悠子(毎日新聞「医療プレミア」、3月28日)

 こんばんは。


 「おうち食堂」や「こども宅食」や「フードバンク」などの試みも始まっています。


> 子どもの貧困と肥満(後編)

> 前回の記事「子どもの食格差生む『給食空白地帯』をなくせ」で、学校給食の完全実施が子どもの食格差対策の核になることを科学的根拠を交えてお伝えしました。今は豊かな家庭生活を送っている子どもでも、親が失業したり、収入が減ったりするといつ生活が困窮するか分かりません。生活困窮は栄養不足や肥満など健康格差につながります。その際、学校給食のようにすべての子どもを対象とする「普遍的対策」は、「食」の保障の観点から重要です。一方で、学校給食だけでは食格差は解消されません。貧困状態の子どもを対象とする「選別的対策」を取る必要もあります。今回は、国内外の選別的な食支援の事例を紹介します。


> 米国の貧困世帯に対する栄養補助プログラムとは

> 米国では1960年代から、貧困世帯に対してSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)という栄養補助プログラムを提供しています。2015年時点で米国民の7人に1人が恩恵を受けており、その半数は18歳以下の子どもです。SNAP受給者には、EBT(Electronic Benefit Transfer)と呼ばれるデビットカードが支給され、承認された店で食料品を買うことができます。SNAPは数百万人を貧困から救っているとされ、SNAPによって貧困の子どもの数が28%減ったとの推計もあります(※1)。

> さらに米国には、低所得の産前産後の女性と5歳以下の乳幼児に特化したWIC(Women, Infants, and Children program)という栄養補助プログラムもあります。WICは、食品の提供に加え、栄養教育やカウンセリング、保健福祉サービスへの紹介を行っています。メリーランド大学医学部のブラック博士(小児科学)らは04年、WICを利用している世帯の乳児(1歳未満)は非利用世帯と比べ、やせや低身長が少ない傾向にあることを報告しました。


> 東京都内で始まった「おうち食堂」と「こども宅食」

> 日本でも米国の取り組みに似た食支援が始まっています。東京都江戸川区は、親の低所得や病気などで食事を用意することが困難な家庭にボランティアを派遣し、無償で夕食を作って提供する「おうち食堂」に取り組んでいます。17年8月に始まり、一定の審査を受けた世帯は年間48回を上限に利用できます。自治体の職員ではなくボランティアがサービスを行うため、選別的支援に生じがちな「支援を受けていることを周囲に知られて、差別を受ける」という問題が起こりにくいのが特徴です。

> また、低所得やひとり親などの事情を抱える家庭は、自治体の相談員が訪問しても家に入れない、入れても本音は話さないことがあり、孤立しがちです。しかし、食支援をきっかけにボランティアが家の中に入ることで、家庭内の問題にも気付きやすく、必要な公的支援につなぐことができます。東京都世田谷区も今年7月、同様の取り組みを始める予定です。

> 東京都文京区は17年7月から、就学援助や児童扶養手当を受けている世帯に、企業から寄付された米やレトルト食品を直接宅配する「こども宅食」に取り組んでいます。江戸川区の「おうち食堂」と同様、食品配達をきっかけに気軽に相談できる関係をつくり、危機的な状況に陥る前に公的支援につなげるのが目的です。

> 「こども宅食」は区と五つの非営利団体、運送会社が共同で運営します。官民の強みを出し合い貧困問題の解決を目指しています。無料通信アプリLINE(ライン)から簡単に申請でき、配送トラックや配送員の制服に「こども宅食」のロゴを出さないなどの工夫で、支援を受けていることが周りに分からないようにしているのも特徴です。


> 学校給食がない夏休み、冬休み中の食支援も

> ここまで自治体主体の食支援を紹介しましたが、民間による選別的支援も盛んです。代表的なのはフードバンク活動でしょう。

> フードバンクとは、包装が破損した食品や規格外の農産物など、十分安全に食べられるのに販売できない食品を企業や農家から寄贈してもらい、必要としている施設や団体、生活困窮世帯に無償提供する活動です。農林水産省によると、44都道府県で少なくとも1団体以上がフードバンク活動をしています(17年1月末現在)。

> 山梨県南アルプス市を拠点とする認定NPO法人「フードバンク山梨」は、貧困状態の子どもを幅広く支援するために学校との連携に力を入れています。

> 市と教育委員会と協定を結び、15年8月から学校給食がない夏休みや冬休みに、子どもがいる生活困窮世帯に米や缶詰などの食品を配送する「フードバンクこども支援プロジェクト」を行っています。小中学校が準要保護世帯(生活保護は受けていないが、生活が苦しい世帯)に申請書を配り、支援を必要とする世帯は自らの判断でフードバンク山梨に返信するという仕組みで、学校にも保護者にも負担がないよう配慮されています。これまでに県内7市と協定を結び、計86校が支援対象となっています。

> 新潟県立大学の村山伸子教授(公衆栄養学・国際栄養学)らがこのプロジェクトの効果を検証したところ、支援前と比べ1日3食を毎日食べるようになった世帯が増え、肉や魚、野菜などの摂取頻度も増えたことがわかりました。フードバンク活動には、米など食品の提供で食費を節約でき、栄養価の高い他の食品や、学用品を購入する余裕が生まれる副次的効果も期待できます。


> 企業がフードバンクに食品提供すると全額損金算入可能に

> 選別的な食支援について、いくつか重要な視点を解説します。まず、日本には米国のような食への公的扶助はほとんどなく、あるのは生活保護の生活扶助や就学援助の給食費ぐらいです。自治体レベルでは先進的な取り組みが出てきており、それらは食支援を入り口として公的支援につなげる点が共通しています。

> 低所得や病気などの事情を抱えた保護者にはコミュニケーションが苦手な人が少なくなく、私もカウンセリングする中で「今週まともに話したのは先生だけです」という言葉を何度も聞きました。そうした人が、まずはボランティアと1対1のつながりが持てるように促すことも大切です。

> 企業、自治体、学校、非営利団体が連携し、互いの強みを生かした支援を展開しています。特に企業との連携では追い風が吹いています。国税庁と農林水産省は18年12月、事業者がフードバンク、子ども食堂、こども宅食などに食品を提供する費用を、経費として全額損金算入できるとの見解を明らかにしました。この措置で今後、不要食品を捨てるよりも、寄付を選ぶ企業が増えるとみられます。

> 以上の取り組みは、支援を受けていることを周囲に知られないよう工夫されていますが、選別的支援につきまとう「低所得者ほど支援情報を得るのが難しく、支援対象から漏れやすい」という問題は残されており、今後も考えていかなければならない課題です。

> おなかいっぱい食べられない子どもがいる――。そう聞いて、自分も何かしたくてうずうずしている人は、食支援をしている自治体や民間団体に寄付することから始めてみてはどうでしょうか。

> 「もう少しできそう」という人は、民間団体の活動に参加してみましょう。さらにパワーのある人は、子どもの貧困の背景にまで目を向け、親の貧困やひとり親世帯の問題を調べ、声を上げてください。企業、自治体、学校、非営利団体、メディア、研究者などさまざまな立場の大人が協力し合って、子どもの食格差を解消したいと思います。

>   ×   ×   ×

> ※1:米国の人口動態調査・年間社会経済付録の2015年のデータを用いた推計による

<参考=「「子どもの栄養状態改善」存在感増すフードバンク “子ども食堂”の時代-親と子のSOS- 可知悠子」(毎日新聞「医療プレミア」、3月28日)>


NO.1936 子角山(ねずみやま)の紅葉は、まだ綺麗でした<起稿 磯津千由紀>(19/12/19)


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2019/12/19 (Thu) 02:26

 こんばんは。


 12月18日(水)に拙ブログにアップした記事ですが、気が変わったので、此方にも転載させて頂きます。
 子角山は、掛川城の古城があったとされる場所ですが、今は堀の痕跡ぐらいしか残っていません。


 ろくに歩けぬ私にとっては、手近で駐車場から殆ど歩かずに紅葉を見られるのが、子角山(掛川市掛川1104、掛川消防署の裏山)です。
 もう12月も18日になるし、一昨晩の大雨と昨晩の雨で、もう終わってるかもしれないと思っていたのですが、まだ大丈夫でした。
 また、今日は良く晴れて呉れました。明日はまた雨の見込みです。








NO.1937 地震<起稿 ABC>(19/12/19)


【ABC】 2019/12/19 (Thu) 21:12

 NHKFMを鳴らしていると、緊急地震速報がはいります。そこで身構えると、これまでの大方は、遠隔でした。
 その内の最大震度が5強でもないのも、延々と報道しています。それは良いのですが、1番組を潰して、打ち切って、ケロリと次の番組を始めて、そして二度と再び続報をしません。この機械的な、いかにも面倒臭さ気なやっつけ仕事には、2面から呆れます。どういう意味でも不真面目ですよねえ。恐らくは自覚もありませんね。

 ところで、遠隔地もつながっています。地球の裏側でもでしょうが、数百kmくらいは近いです。到達に時間がかかりますが、何であれ必ず届きます。少し待っていると揺れ出します。段々に強まり、それから減衰します。
 天井から吊ってある物が揺れ出すのです。今時の震度計なる物が、どんな鋭敏性と記録力を持つのでしょうね。繊細過ぎては、大地震に対応できませんが。


 長野や神戸や熊本や大阪の様に内陸地震だと、震源地は物凄いでしょう。そこが人の済む地域であれば、想像も恐ろしいです。しかし震源が海中であれば、その様には届きません。
 3.11の東北の巨大地震には、何百kmも隔たっていても、震度5弱でした。その電信柱がクネクネする揺れが、通算2分以上は続いたのです。そんな事を切実に伝える震度計なのでしょうかねえ。

 あれは海底地震で、M9超の為に、直下でもない陸地に震度7でした。しかし、積雪地帯の家屋は丈夫で、震度7にも耐えた様でした。それを破壊したのが、10m超の巨大津波でした。
 それほどな世界史上にも格別の大地震も、阪神も熊本も、大阪も、京都には届き難い様ですねえ。私の様に天井から重りを吊るして置くと、いくらか全国とつながれますよ。お勧めです。