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雑談<NO.75>

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1013 技術のブレークスルーでLED照明は新展開へ(日経テックオン) 磯津千由紀 14/12/16
雑談NO.74

NO.1013 技術のブレークスルーでLED照明は新展開へ(日経テックオン)<起稿 磯津千由紀>(14/12/16)


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/16 (Tue) 07:05

 おはようございます。


 LED電球やLED照明器具の効率は気にしていましたが、事業所の蛍光灯ランプを置き換える直管型LEDランプの効率向上は見落としていました。


> 【第1部:市場動向編】伸びシロはまだ大きい、効率向上が停滞打破の力に

> 市場の伸び悩みが伝えられるLED照明市場。しかし、これは一時的な踊り場にすぎない。LED照明の市場開拓はまだ始まったばかりで、しかも技術進化や製造コスト削減の余地が大きいからだ。実際、発光効率を格段に高めた製品や新用途に向けた製品の販売は極めて好調だ。

> LED照明は、技術のブレークスルーによる、第2幕ともいうべき新しい展開が始まりつつある。例えば、発光効率が従来の約2倍と高い100lm/W台後半の製品が登場し、市場に新風を吹き込んでいる(図1)。


> 「バカ売れ状態」─。2014年3月に直管形LEDランプとしては世界最高の発光効率190lm/Wの製品を発売したローム Lighting製造部 統括部長の四方秀明氏は、同製品の売れ行きをこう表現した。「スーパーやホームセンター、ドラッグストアなど明るい照明を長く点灯させている店舗を中心に、想定の2倍ぐらいの勢いで売れている」(四方氏)。

> やはり2014年3月に発光効率140~170lm/Wの直管形LEDランプを量産出荷したアイリスオーヤマも意気軒昂だ。「2013年は横ばいだったが、2014年になって盛り返している。現在の販売は極めて好調」(アイリスオーヤマ 執行役員 LED事業本部本部長の石田敬氏)という。


> 蛍光灯の置き換えは頭打ち

> LED照明は2012年までに金額ベースでは国内の照明市場全体の約2割を占めるまでに成長した(図2)。ところが、2012~2013年は伸び悩んだ。出荷量は伸びているものの、価格の下落が進んだからである。


> 現在のLED照明市場の中心は、白熱電球と蛍光灯の置き換え用途である。白熱電球からLED電球への置き換えは順調だ。白熱電球市場はLED電球の登場前のわずか1/3以下になっている。しかし、価格下落のために、2013年のLED電球市場はほぼ横ばいにとどまった。一方、蛍光灯からLEDランプへの置き換えは期待通りに進んでいない。当初からペースは鈍く、2012年の時点で既に「もう少し置き換えが進むと思っていた」(ある中堅の直管形LEDランプメーカー)という失望が聞かれた。

> 今後については、「日本のLED 照明市場全体は2015年にピークを迎え、その後は縮小する」(オランダのRoyal Philips社)という見方が出ている。価格下落が続く一方で、2015年にはLED照明器具の出荷量の伸びが鈍るという予測を根拠とする。ところが、ロームやアイリスオーヤマのように格段に高い発光効率を備えた製品を発売したメーカーは、売り上げを大きく伸ばしている。


> 市場拡大には発光効率が重要

> これらから分かるのは、LED照明の市場開拓の大きな原動力となるのが、やはり発光効率の高さであることだ(図1)。そして、LED照明の利用を広げるには、これまでの発光効率が、十分高いとはいえなかった。

> 少し詳しく説明すると、LED照明の発光効率が白熱電球や蛍光灯といった既存の照明に対してどの程度高いかで、置き換えによる電気代の削減効果が決まる。LED照明には初期費用が高いという課題がある。しかし、LED照明の発光効率が既存の照明より圧倒的に高い場合は、電気代の低下分で初期費用を短期間で回収できる。このためLED照明の導入の障害にはならない。回収後は電気代の低下分の恩恵を丸ごと享受できる。

> 一方、LED照明の発光効率が既存の照明に比べて多少高い程度では、初期費用の回収に時間がかかるため、導入は進まない。ましてや、LED照明の発光効率が既存の照明より低い場合は、別の付加価値が必要になる。初期費用が既存照明より安くなるのは当面考えにくいからだ。


> 初期費用回収は2年が分岐点

> LED電球の場合、白熱電球との発光効率の比は5倍前後と圧倒的に大きかった。2009年ごろのLED電球の価格は1個5000円前後もしたが、電気代が約1/5に下がることで、1日6時間点灯を想定すると2年足らずで初期費用を回収できた。

> 一方、蛍光灯の代替を狙う直管形LEDランプでは、状況が違った。製品が増え始めた2011年ごろの発光効率は85lm/W程度であり、蛍光灯に対する優位性は小さかった。「初期費用を回収するのに5年はかかる製品だった」(アイリスオーヤマの石田氏)。発光効率が向上した最近は、これが2~3年に短縮している。「店舗やオフィスビルは2年契約が多いため、導入を加速するには2年以下で初期費用を回収できるようにしたい」(石田氏)という。最近の技術進化によって、LED照明はこうしたニーズに応えられるようになりつつある。

> アイリスオーヤマの140lm/Wの新製品の場合、「非インバーター式の蛍光灯の置き換えでは回収期間が約1.8年、インバーター式では約2.3年」(石田氏)。2年の壁を破りつつある。よって、これからが、蛍光灯の置き換えを狙うLED照明にとって本当の勝負になる。


> 200lm/W超えも間近に

> 現在、直管形LEDランプの発光効率は、研究開発では200lm/Wに達している(図3)。量産品で最も高効率なのは前述のロームの190lm/W品である。アイリスオーヤマは180lm/W品を2014年7月に量産する計画だ。「当面の目標は200lm/W」(アイリスオーヤマの石田氏)とする。パナソニックも2014年2月、器具一体型としては最高水準の160.4lm/W品を発売した。


> 一方、LEDチップについては、研究開発では米Cree社が303lm/W品、量産品でも同社が208lm/W品を発表し、世界をリードしている。それをPhilips社や台湾Lextar社などが追っている。豊田合成も近く200lm/W品を発表する見通しだ。


> 発光効率が200lm/Wの大台に乗ることは、幾つかの点で画期的といえる。1つは、蛍光灯の発光効率の2倍を超えることで、LEDランプに置き換えるメリットがより明確になる点。そして、蛍光灯ばかりか、既存のほとんどの照明技術の中で発光効率が最も高い水準になる点である。180lm/Wの低圧ナトリウムランプの置き換えも視野に入ってくる。

> さらに、ほとんどの照明が高効率のLED照明になれば、世界のエネルギー事情にも大きなインパクトがある。東芝によれば、2005年時点の世界の一般照明の発光効率は、平均で約51lm/W。これがすべて200lm/W以上になれば、照明に用いる電力量は1/4以下になるからだ(「200lm/WのLED照明で原発17基分を削減可能に」参照)。


> 大光束照明のLED化も始まる

> LED照明に置き換えが進みそうな用途は蛍光灯の他にもある。倉庫の高天井や屋外スポーツ施設の照明設備、街路灯などで用いられている大光束の水銀灯†やメタルハライドランプ†だ。

> LED照明では最近までこうした用途に必要な大光束を確保できなかった。しかし、COB(chip on board)†と呼ぶパッケージ技術の開発が進んだことで、10万lm近い大光束を実現する製品が登場するようになった(図4)。LED照明への置き換えに大きなハードルはなくなったといえる。

> 欧州ではPhilips社が水銀灯に代わるLED照明器具を積極的に推進している。「高天井の水銀灯代替では1日12時間の点灯の場合、2.4年で初期費用を回収できる」(Philips社)。

> さらに同社は、LEDを用いた街路灯などでは、「スマートライティング」と呼ぶ新しい使い方も提案している。センサー技術や通信インフラと組み合わせて、人や自動車のいる場所だけを照らすことができる照明だ。


> 水俣条約への署名が追い風

> こうした水銀灯や蛍光灯のLED照明への置き換えには強力な追い風も吹き始めた。2013年10月に、水銀を含む製品の製造や流通を規制する「水銀に関する水俣条約」が採択され、日本政府も署名したことだ。

> 同条約には、既存の蛍光灯の多くや一般的な水銀灯などの新規の製造および輸出入を2020年に禁止するという内容が盛り込まれている。発効は50カ国以上の批准という条件があり、早くても2016年以降になるとみられるが、欧州では既に水銀を含む製品の規制が進んでいる。

> 既に動き出した国内メーカーもある。パナソニックだ。同社は2014年3月、「2015年度をメドに家庭向け蛍光灯用の照明器具を生産中止し、LED照明器具で代替する」ことを明らかにした(「蛍光灯時代がいよいよ終焉か」参照)。水俣条約を直接的には理由に挙げていないが、決定の背景の1つになっていそうだ。


> ヘッドライトへの普及が加速

> 一般的な照明以外でLED照明の利用が急激に増えている用途もある。自動車のヘッドライトだ(図5)。自動車分野では、赤色のテールランプへの採用が比較的早く始まり、現時点で既に普及率が50%を超えている。

> 一方、LEDヘッドライトについては、小糸製作所の製品が2007年にトヨタ自動車の「レクサス」に用いられたのが初めてである。その後、しばらくは主に高級車での利用にとどまっていた。しかし、2013年ごろからトヨタ自動車の「カローラ」(北米仕様)など一部の大衆車にも採用が進み、出荷数が急激に増えた。

> LEDが使われているヘッドライトは現在、ロービームと呼ばれるやや下向きのライトが中心である。ハイビームへのLEDの利用は始まったばかりであり、これからの普及拡大が期待できる。「オートバイのヘッドライトに採用され始めたのも2013年から」(小糸製作所 取締役副社長 技術本部長の横矢雄二氏)だという。

> さらに、既存のライトの単純な置き換えだけでなく、自動車の運転の常識を変える、LEDならではの高い付加価値を備えたヘッドライト製品も登場してきた(「LEDヘッドランプが急激に進化、対向車や人、そして雨粒を避けて照射」参照)。LEDヘッドライトの市場拡大はしばらく続きそうだ。


> 価格下落は止まらない

> 技術進化と性能向上によってLED照明の用途は拡大する一方で、一般照明用途のコモディティー製品の価格は下落し続ける可能性が高い。2009年から2011年にかけて60W相当のLED電球の価格は6000円弱から2000円弱と約1/3になった。そして、2013年には1000円前後と、さらに1/2に低下した。今後も、このような価格下落は止まらないという見方が支配的である。

> 価格下落を牽引しているのは中国や台湾のメーカーである。「既にLEDパッケージの1W品の価格は1個10円前後で、日本や韓国、欧米の1/4になっていると聞く」(名古屋大学 大学院工学研究科 電子情報システム専攻教授の天野浩氏)。

> 直管形LEDランプも例外ではなく、価格下落を促す動きがある。「欧州のメーカーが、やや発光効率が低い型落ちの直管形LEDランプの在庫をさばくため、大幅に価格を下げて価格破壊を招いている」(ある日本のLEDランプメーカー)。

> 市場競争を勝ち抜くためには、この急激な価格下落に巻き込まれないような対抗策を考えていく必要がある。例えば、照明の電球だけではなく照明器具と併せて提案することなどだ。それだけで市場規模は3倍以上に拡大する。


> 技術革新の余地は大きい

> もしLED照明の発光効率の向上が200lm/Wで止まってしまうなら、早晩、価格競争だけの産業になりピークアウトする可能性が高い。200lm/Wの実現によって生まれた蛍光灯の置き換え需要などが一巡すれば、次の停滞にぶつかるからだ。そうなると、コモディティー化による急激な価格下落に巻き込まれるのは避けられない。

> LED照明がコモディティー製品に陥らないようにするためには、継続的な発光効率向上が不可欠である。加えて、さらなる大光束化や高輝度化、そして価格下落に対抗するための製造技術上の工夫も必要だ。

> 幸い、LED照明の場合、技術革新の余地はまだ大きい。発光効率300lm/W超えが視野に入るなど、技術的ブレークスルーが相次いでいる。製造コストを大幅に削減できる製造プロセス技術も出てきた。米国エネルギー省(DoE)は、LEDパッケージの製造コストが、2020年には2012年比で約1/6、2013年比で約1/5に低下すると予測する(図6)。ウエハー上でのパッケージ技術の進展などがコストダウンの軸になるとする。


≫ 200lm/WのLED照明で原発17基分を削減可能に

≫ 高い発光効率のLED照明が普及するかどうかは、日本や世界の電力問題を大きく左右する。

≫ 照明が、全電力消費量の中で占める割合は意外に大きい。LED照明普及前の2000年の日本では年間全電力消費量の約16%の150.6TWh(1506億kWh)、世界では2005年に約19%の2650TWhが照明に費やされていた。2650TWhは米国の年間電力消費量の約6割に相当する。

≫ 一方、一般照明の平均的な発光効率は2005年時点で約51lm/W(東芝調べ)。つまり、すべての照明が200lm/WのLED照明に置き換われば、それだけで約2000TWh、米国の年間全電力消費量の1/2を削減できることになる。

≫ オフィスビルでの省エネ効果も大きい。オフィスビルでは照明の電力消費量が全体の3~4割を占めるからだ(図A-1(a))。


≫ ベースロード電源の負荷を低減

≫ 照明用電力量の削減は、原子力発電(原発)の必要性を低減することにもつながる。照明が必要なのはやはり夜間が中心。これを支えているのがベースロードと呼ばれる電源で、2010年までの日本では原発が大部分だった(図A-1(b))。

≫ 日本の原子力発電による発電量は2000年時点で年間約319TWh。150.6TWhを消費した照明がすべて200lm/WのLED照明に置き換わり、電力消費量が1/4になれば、ベースロード電源の需要が3割減り、原発にして約17基分の省エネになる。現時点では原発の代わりに、火力発電でベースロードを賄っているが、化石燃料を大幅に節約できる。

≫ 日中しか発電しない太陽光発電はいくら増えてもベースロード電源の代わりにはならない。一方で、ベースロードに使えそうな地熱発電や風力発電の日本での普及にはまだ相当時間が掛かりそうだ。高効率のLED照明を増やすことはそれらに比べれば比較的容易で、しかも迅速にできる。それでいて非常に大きな効果をもたらすといえる。


≫ 蛍光灯時代がいよいよ終焉か

≫ 松下電器産業と松下電工が40年以上続けた「明るいナショナル」のCMで知られるパナソニックの蛍光灯。その販売が、早ければあと数年で終わる可能性が出てきた。パナソニックが2014年3月、蛍光灯用照明器具の生産を2015年度にも中止することを明らかにしたのである。「特段大きな決断というわけではない。LED照明が伸びてくることで、結果的に蛍光灯が不要になると考えたから」(同社)という。

≫ 同社は白熱電球の製造を2012年10月に中止している。今後は全力でLED照明に注力する方針で、LED照明で既存の照明を置き換える技術開発を加速させている。例えば、白熱電球の明るさを変えると色温度が変わる特性をLED照明で再現する技術や、蛍光灯の2倍近い発光効率のLEDランプ製品、さらにはLED照明の色温度を100K単位で切り替えられるような技術である(図B-1)。

≫ 一方、「光る東芝」のCMで知られた東芝ブランドの蛍光灯は、まだしばらく残りそうだ。東芝ライテックは白熱電球の製造中止こそ2010年3月と早かったが、蛍光灯に関しては、水俣条約の規制基準を下回る水銀含有量の製品を開発しているからだ。

≫ 水俣条約では、60W以下の蛍光灯の場合、水銀含有量が5mg以上だと規制対象となる。一般的な蛍光灯は水銀が7mg程度含まれており、基準に抵触する。一方、東芝ライテックが開発したのは水銀含有量が4mgの蛍光灯で、規制対象から外れる。

≫ LED電球と低水銀の蛍光灯が市場を分ける時代がしばらく続く可能性もある。


≫ LEDヘッドランプが急激に進化、対向車や人、そして雨粒を避けて照射

≫ 夜間、暗い道を運転している時に対向車が来た場合、ヘッドライトのハイビームをロービームに切り替えるのは一般的な運転マナーだ。しかし、対向車が過ぎ去ってからの数秒はロービームだけになり、安全性が低下している。この切り替えを自動化し、しかもよりスマートにできれば、より安全な運転につながるだろう。

≫ 最近になってそれが現実になり始めた。車載カメラの映像認識技術とLEDの点灯制御技術を組み合わせて、ヘッドライトのハイビームを対向車にだけ当てないようにする、あるいは歩行者に注意喚起などの目的でハイビームを当てるような機能である(図C-1)。世界中で開発競争が始まっている

≫ 最初に実用化したのは小糸製作所だ。2012年発売のトヨタ自動車の「レクサス LS」に採用された。この「Adaptive Beam System(ABS)」機能は、LEDからの光を可動式の遮蔽板で適宜遮り、対向車などにハイビームを照射しないようにするものだった。

≫ 2014年春にはドイツAudi社が同社の自動車「A8」のLEDヘッドライトで、可動部を用いずに同様な機能を実現した。LEDチップ25個を、光軸の異なる反射板に分散配置し、所望の方向のハイビームをオン/オフするのである。

≫ 一方、小糸製作所が開発中の第2世代のABSでは、やはり可動部はなく、レンズを用いることなどで、ハイビームの方向をより細かく制御可能になった。対向車に加えて、先行車にもハイビームを当てないようにできる。

≫ 技術開発は既に“その先”へと進んでいる。米Texas Instruments(TI)社は、同社のプロジェクターの要素技術「DLP」を用いてLEDの光の方向を制御し、ハイビームの方向をより細かく、しかも高速に制御する技術を開発している。

≫ 2012年には米Carnegie Mellon University、韓国Samsung Advanced Institute of Technology、米Intel社、そしてTI社が、DLPを用いて、雨粒や雪を避けながら道路を照射するヘッドライトを試作した。雨粒を超高速カメラで捉え、その落ちる方向を予測して、その方向へは光を当てないようにする技術である。


> 【第2部:技術開発編】白色LEDの基本構成を刷新、効率、コスト、輝度の壁破る

> 日亜化学工業が基本構成を開発し、それが広く普及した白色LED。しかし、LED照明への要求が多様化し、従来技術の枠組みでは対応できなくなってきた。今、改良にとどまらず、基本構成が異なる技術が台頭しつつある。こうした技術が従来技術を置き去りにする可能性も見えてきた。


> LED照明は、技術面でも第2幕を迎えている。従来の白色LED技術の改良版ではない、基本構成をガラリと変えた複数の技術が大きく台頭しつつあるからだ。こうした革新的な技術が、白熱電球や蛍光灯以外の新しい照明用途を開拓していく。

> 従来の白色LEDとは、日亜化学工業が1996年に発売した技術に基づくLEDである。サファイア基板上にGaN結晶を成長させて作製した青色LEDとYAG†と呼ばれる黄色発光の蛍光体を組み合わせて白色光を作り出すことを基本とする。

> この技術が、白色発光を実現する他のLED技術との競争を勝ち抜いてきた優れた技術であることは間違いない。ただし、技術的な成熟度は高く、さらなる性能向上の伸びシロが大きいとは言えなくなってきた。

> 日亜化学工業自身、2010年初めに電流20mAで249lm/Wという非常に高い発光効率のLEDを試作した際に、「技術は限界近くまで向上した」と考えて、発光効率を追う研究や発表を一段落させたという。

> 一方、照明市場でのLEDの役割が大きくなるにつれて、性能についての要求も高度化、多様化してきた。具体的には、(1)発光効率のさらなる向上、(2)製造コストの大幅な削減、(3)高い輝度の実現、(4)演色性の向上やグレアと呼ばれるLED特有のギラつきの低減、などだ。これらに従来の白色LED技術が十分応えきれていないことが、市場の伸び悩みの背景になっていたといえる(図1)。


> ギリギリの工夫で性能を確保

> これまで、高い発光効率や大光束のLED照明製品は、(1)~(4)の課題をなんとかして克服しようと、少ない技術の選択肢の中で工夫を凝らしてきた。例えば、発光効率が200lm/W近い直管形LEDランプは、各チップに小さな電流を流して低い輝度で発光させることで、高効率を実現したとみられている。それを多数並べることで、ランプ全体として必要な光束を確保するわけだ(図2)。

> こうした設計にする理由の1つは、LEDチップの発光特性として「ドループ(droop)現象」があるからだ。これは、発光効率は電流密度が小さいほど高く、電流密度が大きくなると右肩下がりに低下してしまう特性である。発光効率と輝度がトレードオフの関係にあるともいえる。

> もちろん、いくら電流密度を小さくしてもLEDチップ本来の発光効率の限界は超えられない。このため、LEDランプメーカーは、少しでも高い発光効率のLEDチップの獲得競争に乗り出している。これは技術力の高いLEDチップメーカーと契約することだけではない。

> LEDチップは、同じメーカーが同じ条件で製造しても、発光効率が高いものから低いものまで性能がバラつく。そのバラつきの中から、標準品より高い発光効率を持つチップを確保する競争をしているのである。例えば、アイリスオーヤマは、「マグロでいえば“トロ”に相当する良品を選んで利用している」(同社 執行役員LED事業本部 本部長の石田敬氏)。ただし、あまり高い性能のチップだけに限定してしまうと、市場から要求される量を確保できなくなる。同社は、性能と量のバランスを見極めて、製品の仕様を決めているという。


> グレアや低い演色性も課題

> 従来の高効率の直管形LEDランプで、各チップに小さな電流を流すようにしていたのには別の理由もある。チップに大きな電流を流すと、各チップの輝度が非常に高くなり、グレアが目立ってしまうからだ。不均一でギラギラした照明になってしまうのである。これでは、面状に均一な光で発光する蛍光灯の代替にならない。また、既存の白色LEDでは、発光効率の高さを優先させると、演色性が低下するという課題もある。

> 水銀灯など大光束ランプの代替向けCOB(chip on board)でも、直管形LEDランプと同様に、多数のLEDチップを並べて比較的低い電流密度で駆動する戦略を取っている。大光束と高い発光効率、そしてグレアの抑制を両立させるためである。しかし、多数のチップを並べると必然的にCOBの面積は大きくなる。これでは、自動車のヘッドライトや部屋のダウンライトなど、限られた面積で大きな光束、つまり高い輝度を確保した、しかも発光効率も高くしたいという用途には、使いにくい。


> 欲しい性能ごとに技術を選択

> このようなギリギリの工夫では、電球や蛍光灯以外にも広くLEDを使いたいという、市場からの要求に応えることは難しい。このため、LED照明の用途開拓の展望がなかなか開けないでいた。そこで、従来の白色LED技術とは基本構成が異なる技術を導入して、壁を大きく越えることを目指す動きが加速している(図1)。先述の(1)~(4)の課題について、確保したい性能ごとにまったく異なる技術を取り入れる。

> (1)の発光効率については、既に米Cree社のように研究開発品で303lm/W、量産品で208lm/Wと非常に高い値を実現したメーカーがある(図3)。同社のLEDは、炭化ケイ素(SiC)基板上にGaN結晶を成長させて製造する。日亜化学工業の白色LED技術とは当初から系統を異にするものだ。

> このことは、研究開発よりも量産段階で差が現れるようだ。Cree社製と日亜化学工業製のLEDの発光効率を電流密度で比べると、303lm/W品以外は、日亜化学工業の優位が目立つ(図3(b))。それでもCree社の量産品の投入時期は、日亜化学工業など競合他社より1~2年早いのである。


> 多色LEDなら400lm/Wも

> Cree社の技術には“謎”もある。2014年3月に同社が発表した発光効率が303lm/Wの白色LEDは、従来の白色LED技術での発光効率の理論限界を超えているのである(図4(a))。これには「青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせとは異なる技術を使っているはず」(LEDのある技術者)との見方が多い。

> 実際、従来の白色LEDとは別系統の技術では、発光効率の理論限界がずっと高い。蛍光体を用いず赤色(R)、緑色(G)、青色(B)でそれぞれ発光するLEDを組み合わせて白色を作れば409lm/Wという極めて高い発光効率も可能だ(図4(b))。


> 緑色LEDは発光効率が低い

> この多色LEDで白色光を作るアイデアは以前からあった。しかし、日亜化学工業の技術に事実上敗れた。理由は大きく2つある。1つは、多色方式では、白色を維持するために、各色LEDの発光状態の経時変化に合わせて各LEDの駆動電流を制御する必要があることだ。

> もう1つは、赤色や青色のLEDに比べて緑色LEDの発光効率が非常に低かったことである(図5)。緑色LEDはGaNにインジウム(In)を添加し、発光を長波長化して実現する。しかし、結晶成長時のInの組成比の制御が非常に難しく、品質の高い結晶が作製できなかったのである。


> 調色機能をLED照明の軸に

> それでも最近になって、この多色LED方式に再挑戦するメーカーが出てきた。オランダRoyal Philips社だ。同社は多色LED方式を導入し、2013年4月に発光効率が200lm/Wの直管形LEDランプ「TLED」を開発した。課題の緑色発光については方法を見直し、必要な発光効率を確保した。青色LEDと独自開発した高効率の緑色蛍光体の組み合わせで実現している(図6)。

> また、各色LEDの発光状態の経時変化に合わせて各LEDの駆動電流を制御する仕組みも取り入れ、白色を維持できるようにした。さらに、この仕組みを活用し、色をさまざまに選べる調色も実現可能にした。

> 同社はこの多色LEDに基づく調色機能を、通信機能を用いて照明を遠隔制御するスマートライティング機能と組み合わせている。LED照明の重要な付加価値として位置付け、LED照明製品群を再構成していく戦略だとみられる。2012年10月には、1677万色を表示可能なLED電球「hue」を発売。また、10色以上のLEDパッケージも発売した。


> 緑色LEDでブレークスルー

> 多色LED方式において、蛍光体に頼らず、高い発光効率の緑色LEDの開発に真っ向から取り組んでいる研究者もいる。名古屋大学 大学院工学系研究科 教授の天野浩氏の研究室である(図7)。ごく最近になって、外部量子効率(EQE)が約60%という緑色LEDとしては極めて高い効率にメドを付けたという。それまではEQE20%程度が最高だった。

> これまで、緑色LEDのInGaN結晶の高品質化については多くの研究者やメーカーがさじを投げてきた。成長時の温度がわずかでもずれると、In過剰になったり逆に不足になったりするからである。

> 天野氏らが取った手法は、結晶成長をリアルタイムにしかも詳細に見るという方法だ。結晶成長時に3つの波長のレーザー光を照射しながら、結晶状態を観察し、状況に応じて温度などの成長条件にフィードバックを掛けるのである。「結果の詳細な解析や評価はこれから」(天野氏)というが、高効率の赤色LEDや青色LEDなどと組み合わせることで「300lm/W近くの効率は実現できるはず」(天野氏)という。


> 新基板の利用に大きな可能性

> 白色LEDに対する要求のうち、(2)の製造コスト、(3)の高輝度化、(4)の演色性やグレアの限界を超えるための技術の多くは、新型基板に関する技術である。サファイア基板ではなく、別の基板の上にGaN結晶を成長させてLEDを作製する(図8)。選択肢はSiC基板、Si基板、そしてGaN基板などだ。

> それぞれ課題はあるものの、長所については従来の白色LED技術を大きく超えていく破壊力を秘めている。未開拓用途にLED照明の利用を広げる可能性を持つ技術といえる。

> なお、サファイア基板のまま、発光効率の向上や大電流密度への対応を図ろうという研究開発もある(図8(b~d))。これらは基板上にやや特殊な加工を施すものが多く、現状では主流の技術にはなりきれていないが、課題を克服しようと開発を加速させている。新型基板は、こうしたサファイア基板との競争の中で、性能向上を急ぐ。


> Si基板でコストを大幅削減

> 新型基板の技術の中で、(2)の大幅な製造コスト低減を実現できる可能性があるのは、Si基板上にGaN結晶を成長させる「GaN on Si」技術である。最近になってにわかに脚光を浴びている。

> GaN on Si技術は、製造装置に一般の半導体用装置を流用できるのが最大の特徴。これにより、パッケージ工程も含めた製造コストの大幅低減が見込める。GaN on Si技術の研究開発も進める名古屋大学の天野氏は、「GaN on SiならLEDパッケージの価格を1/4にできる」とみる。

> メリットは他にもある。半導体製造技術の流用によって加工性が高まり、他の回路との集積といった、新しい付加価値を生み出せる可能性がある点だ。

> 一方で、GaN on Siも決して新しい技術ではない。大きな期待がかかる中、実用化が最近まで進まなかったのは、技術的な課題を解決できなかったからだ(図9)。例えば、GaNとSiの格子定数の差や熱膨張係数の違いが大きいことから、高品質のGaN結晶をSi基板上で成長させることが容易ではなかった。熱膨張係数の違いから割れたり、Siウエハーが反り返る課題を抱えていたのである。作製したLEDも発光効率が低く、性能向上で先行したサファイア基板ベースの白色LEDに追いつくのは難しいとみられていた。さらには、LEDの基板としては致命的な、Siが可視光を吸収する課題があった。


> 東芝が猛スピードで実用化

> 状況が変わってきたのはごく最近だ。米Bridgelux社がGaN結晶とSi基板の不整合を緩和する技術を開発し、それを東芝が採用してGaN on Si技術の実用化を猛スピードで進めているからだ。

> 東芝はBridgelux社と2011年に提携。2012年12月には、共同で8インチ(200mm)のSiウエハーを用いた白色LEDパッケージの量産を月産1000万個の規模で開始した。石川県にある加賀東芝エレクトロニクスのIGBTなどSi製パワー半導体の製造ラインを一部GaN on Siに流用した。

> 2013年4月には東芝がBridgelux社のLED開発部門を買収。そして、2014年3月には第2弾となる製品を発表した。さらに2015年4月までに第3弾~第5弾の製品投入を予定する計画だ。「我々はLED チップ開発では後発。市場で戦うには武器が必要で、それがGaN on Siだった」(東芝 ディスリート半導体事業部 事業部長附の福岡和雄氏)。

> Bridgelux社は、Si基板とGaN結晶間の不整合を緩和するバッファー層の優れた技術を持っていたという。「独自開発も検討したが、時間を買う意味でBridgelux社を買収した」(福岡氏)。

> 東芝は、発光効率など性能面も急速に向上させている。2012年12月の最初の製品の発光効率は350mAで112lm/Wだったが、2014年3月には135lm/Wと向上。さらに2014年10月の第4弾の製品で170lm/W、2015年4月に予定する製品では190lm/Wの達成を目標とするという。実現できれば、従来の白色LED技術が5年以上かかった性能向上の道のりを1年半で駆け上がることになる。


> 300mmウエハーの利用も検討

> 「Si基板上のGaNの欠陥密度はまだ5~8×108個/cm2で、一般的なサファイア基板を利用する場合の約2倍と多い。しかし、研究開発では3×108個/cm2とサファイア基板並みに減ってきた。近い将来、性能面でもサファイア基板に追いつける。歩留まりも高い」(福岡氏)という。ちなみに、東芝などの技術では、光を吸収するSi基板は途中で除去するため、問題にならない。

> さらに、近い将来の12インチ(300mm)ウエハーの利用も検討しているという。「パワー半導体に向けたGaN on Si技術も開発中で、それらと併せて300mmウエハーで製造を始める可能性がある。工場は四日市になるかもしれない」(福岡氏)。


> 微細加工には制約も

> ただし、課題はある。東芝などの技術では、Si基板として(111)面という半導体ではあまり使わない結晶面のSiを利用する。「GaNとの整合性からそうなった」(福岡氏)。この場合、既存の半導体製造装置でSi基板面を微細加工するなどの工程は使えない。例えば、サファイア基板の表面を凹凸に加工してLEDの光取り出し効率を高める「PSS(patterned sapphire substrate)」技術のSi基板への応用は難しい(「基板の表面加工技術も第2幕へ」参照)。

> GaN on Si技術の研究では、こうした制約を解消し、既存の半導体製造装置を使える強みをフルに生かせる手法の開発も進んでいる。名古屋大学 天野氏の研究室では、一般の半導体技術で用いるSiの(001)面の上にGaN結晶を成長させる技術を開発した。ある金属層をSiとAlNの間に挟むのがポイントだという。しかも、金属層がGaNからの光を反射するため、Siを除去する必要がない。さらには「金属層とドーピングしたSi基板がそのまま電極になる」(天野氏)といった幾つもの長所があるという。

> 天野氏らは、この金属層の技術を基に、Siウエハー上に微細な凹凸加工を施し、その上にGaNの半導体層を形成するGaNナノワイヤ技術を開発中だ(図8(d))。2020年までには、それを300mmSiウエハー上で実現するのが目標だという(図9)。


> 「光るワイヤ」が実現か

> 現在、GaN on Si技術には東芝以外にも多くのメーカーが参戦しつつある。一方、東芝は単なるLEDチップの製造を超えた、次の一手を既に打っている。GaN on Si技術で作製したLEDチップを、ウエハー上でパッケージ化するCSP(chip scale package)技術を2014年3月に実用化した(図10)。

> 従来のサファイア基板を使うLEDでもCSP技術は開発されているが、東芝のLEDはSi基板を使う分、CSPの工程にも既存の半導体製造技術を流用でき、工程がより容易になるという。例えば、基板の除去プロセスで、サファイア基板の場合はレーザーを必要とするが、Si基板の除去はエッチングで済む。

> 現在、LEDパッケージの製造コストは約60%がパッケージ工程でかかっている(第1部、図6)。東芝のCSP技術を使えば、このコストも大幅に下がる可能性が高い。

> もっとも、東芝自身は単なるコスト削減技術としてより、このCSP技術をLEDの新たな付加価値と位置付ける。従来のパッケージと同じLEDチップを用いるが、パッケージの面積は0.65mm角と従来の1/10以下になる。その結果、電流密度を高めず、発光効率を維持しながら従来に比べて大幅に高輝度化できる。

> 想定する用途は、超小型・超薄型であることを生かした薄型スマートフォンや超小型照明などへの実装である。さらには、「ワイヤ上にこのLEDを実装してライン光源にすることも考えている」(福岡氏)という。


> GaN基板の役割は大きく2つ

> サファイア基板とは異なる新型基板を用いるLEDで、注目を集めるもう1つの技術がGaN基板を用いる「GaN on GaN」技術である(図11)。主な効果は大きく2つある。1つは、(3)の大きな電流密度をLEDチップに流すことによる大幅な高輝度化の実現。もう1つは(4)、すなわち高い演色性の確保やグレアが少ない目に優しい光の実現である。

> GaN on GaNで大幅な高輝度化が可能なのは、GaN基板とGaN結晶の格子定数がほぼ一致していることで、GaN結晶中の線欠陥が非常に少ないからだ。この場合、電流密度を大きく高めても発光効率の低下幅は小さい。

> GaN基板を開発する日本ガイシは、欠陥密度が106個/cm2の4インチ(100mm)ウエハーを生産している。これはサファイア基板上のGaNの場合の1/100以下だ。「実験室では105個/cm2を実現済み。近い将来、104個/cm2も実現できる見通し」(日本ガイシ 研究開発本部 ウェハープロジェクト 部長の吉野隆史氏)という。


> 大光束を2mm角チップで実現

> GaN on GaN技術でLEDを量産する数少ないメーカーの1つ、米Soraa社†は、10A/mm2という、一般的なLEDの数十倍の電流密度で駆動した場合でも、外部量子効率が約55%以上あるデータを公表している(図11)。

> これは例えば、シチズン電子の発光部が直径38.2mmの大型COBで実現する光束2万3549lmを、約2mm角のLEDチップで実現できることを意味する。その場合の発光効率は推定で160lm/W超と高い。ただし、放熱をどうするかは別の問題だ。

> 日本ガイシも、同社のGaNウエハーを用いた青色LEDを名古屋大学と共同で試作し、電流密度が約2A/mm2の場合に内部量子効率が約90%と高い値を得ている。緑色LEDでも同60%と高い。

> この用途での課題はやはり、超高輝度にした場合の放熱の問題だ。発光面積が小さいため、熱がその面積に集中するからである。


> 「白よりも白い」光をアピール

> 最近、GaN on GaN技術は、単純な高輝度よりも、特に白色LEDに求められている(4)の要件、つまり高輝度でも演色性が高く、グレアが少ないLEDを作製しやすい点がむしろ注目されてきている。

> これは、演色性の高い白色の実現に向く、紫色LEDの作製に適しているからである。GaN on GaN技術ではGaN結晶中のInの量を減らした紫色LEDを、サファイア基板を用いた場合よりも作製しやすい。Soraa社のLEDも紫色LEDである。

> 紫色LEDの発光中心波長は410nm前後であり、光のエネルギーが青い光よりもやや高い。蛍光灯で用いられている蛍光体と組み合わせると、蛍光灯と同様な演色性の高い照明を作製できる。例えば、Soraa社の高天井用高輝度LEDランプの演色性(CRI)は95、深い赤色に対する演色性の指標R9は95といずれも高い。白色についても、「従来の白色LEDに比べて、白がより白くなる」(Soraa社CTOのMike Krames氏)とアピールする。


> 既存LEDの価格低下に衝撃

> GaN on GaN技術では、(3)と(4)の双方の用途に共通する課題として、コスト競争力が低い点が挙げられる。これはGaN on Si技術のコスト競争力が高いのと対照的だ。GaN基板は非常に高価で、価格の急速な低下は当面見込めないからである。ただし、GaN基板の価格はCree社が採用しているSiC基板と大差がない。最大の問題は、これから実用化というタイミングで、競合する既存の白色LEDの価格が急速に下がっていることである。

> GaN on GaN技術を研究開発している国内メーカーは多い。例えば、パナソニック、三菱化学、住友電気工業などだ。ただし、量産に結びつけている例は少ない。「既存のLEDにはない高い付加価値が必要になるが、GaN on GaN技術でそれが提供できるのか」(日本ガイシ)と自問自答するメーカーもいる。


> LEDチップからの直接光を抑制

> LEDの性能を大きく高める技術の中で、(4)の演色性を高め、グレアを低減する手段としては、蛍光体を新たに開発する選択肢もある。小糸製作所や名古屋大学、東京工業大学は、黄色発光体を独自開発することで、(4)の実現に貢献できたとする(図12)。

> 小糸製作所が開発したのは、Cl_MS(クルムス)蛍光体と呼ぶ、カルシウム(Ca)などを含む材料である。チップには紫色LEDを採用し、このCl_MS蛍光体と蛍光灯で利用する青色蛍光体を組み合わせて作製した。

> グレアは、従来の白色LEDの構成と深いつながりがある。チップの青色発光と黄色蛍光体からの発光のうち、青色発光が直接目に入ることと関係しているのである。しかも青色の光はLEDパッケージの周囲からは出てきにくいため、パッケージの周囲は必然的に黄色くなり、色ムラとなってしまう。

> 今回は、紫色LEDから出てきた光を2種類の蛍光体に一度すべて吸収させ、蛍光体からの発光分だけが外に出てくるようにした。これで、グレアと色ムラはほとんど解消した。既に、LED電球や直管形LEDランプ、NHKのドラマ撮影用照明などを開発済みだ。「撮影の現場では目に優しい光で好評だと聞いている」(小糸製作所 研究所 主管の大長久芳氏)という。


≫ 基板の表面加工技術も第2幕へ

≫ LEDの発光効率を大きく向上させることに寄与した技術の1つに、PSS(patterned sapphire substrate)がある。これは、サファイア基板表面に数μmピッチの凹凸パターンを形成することで、LEDの光取り出し効率が2~3割向上する技術である。2003~2004年にLEDの光取り出し効率を高める研究が盛んになる中で発見され、2009年ごろには量産品に用いられ始めた。今ではほとんどのLEDに使われているといってよい。

≫ PSSで光取り出し効率が高まるのは、GaNから出てきた光が基板で反射する際、基板に対して水平に近い方向へ向かう光をこのPSSが抑制するからと考えられている。こうした光はLEDチップ内部で全反射を繰り返し、外部に出てこられないからだ。理屈は単純でも、実際には凹凸パターンをどのような形状にするかでさまざまなノウハウがある。


≫ 光取り出し効率が30%から80%に

≫ この技術も最近になって大きく進化している。例えば、理化学研究所 光量子工学研究領域 テラヘルツ量子素子研究チームの平山秀樹氏などは凹凸パターンのピッチを従来の1/10に微細化することで、深紫外LEDの光取り出し効率をPSSの約30%から、正面方向で最大80%に高められる可能性を見いだした。

≫ パターンを形成する装置を開発した東芝機械によれば、「微細パターンは単なる反射の制御ではなく、フォトニック結晶として機能している」という。フォトニック結晶は、波長の1/2程度の周期構造を人工的に構成した材料で、特定の波長の光を高い反射率で反射したり、逆に透過させたりといった機能を実現する。

≫ 王子ホールディングスも紫外LED向けに、PSSを進化させた「複合構造PSS」技術を開発した。正面方向の光取り出し効率はこの構造がない場合の2.4倍になるという。複合構造PSSは、従来の数μmピッチの凹凸構造にその1/10のピッチの凹凸パターンを加えたPSSで、王子ホールディングスは「フラクタル構造」とも呼ぶ。同社は、微細な方の構造はGaNの結晶欠陥を低減する効果があると推測している。

≫ 王子ホールディングスは2016年にこの微細加工技術を基にした直径2~6インチ(約50~150mm)のPSSの販売を始める計画。同社はこれまでLED向けサファイア基板を出荷した実績はなく、新規参入になるという。

<参考=「技術のブレークスルーでLED照明は新展開へ」(日経テックオン)>
(2015年からは会員限定)
<消滅・削除・15/08/26>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/17 (Wed) 15:44

 こんにちは。


> 「バカ売れ状態」─。2014年3月に直管形LEDランプとしては世界最高の発光効率190lm/Wの製品を発売したローム Lighting製造部 統括部長の四方秀明氏は、同製品の売れ行きをこう表現した。「スーパーやホームセンター、ドラッグストアなど明るい照明を長く点灯させている店舗を中心に、想定の2倍ぐらいの勢いで売れている」(四方氏)。

 不覚にも、ロームがLEDランプを作っていたとは、存じませんでした。
 LEDチップも内製なのでしょうか。


【?】 2014/12/17 (Wed) 16:10

自照?

<参考=「ローム本社施設に自社製の高効率LED照明を全面導入・約50%の電力削減を実現し、節電・省エネに大きく貢献」(ローム)>
<http://www.rohm.co.jp/web/japan/
news-detail?news-title=2013-02-28_news&defaultGroupId=false>
<ユーザー・パスワードを要求される・18/03/24>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/17 (Wed) 19:35

 名無し様、こんばんは。


> ロームの半導体技術を活かした「直管形LEDランプ」は、目に優しい広がりのある明かりが特徴で、さらに高効率の電源回路により、業界トップクラスの省エネ性能(発光効率)を誇ります。

 LEDチップも内製のようですね。
 沖電気工業から買収した工場で作っているのでしょうかね。


【シバケン】 2014/12/18 (Thu) 00:43

磯津千由紀さん、こんばんわ。
返信が遅れましたです<汗>

LEDチップは、約40年前<1975年頃>より、製造してるです。

当時より、ウェハーを購入。
ローム本社内で、拡散、蒸着から、ダイシングまで、行ってましたです。

私も、入社5年辺り<?>の頃、抵抗器製造から、半導体製造に移籍しまして。
<注=半導体製造部は、数年で、DIOD、LED、TRに分裂したです>

当時、私自身は、ウェハーには、関係してませんですが。赤色LED<当時は、赤のみ製造>の、注型の際の、樹脂クラック対策に携わったです。

担当は、LEDが主で無く、マトリクス抵抗と、ダイオードでしたです。
担当も、本来、品質管理ですが。主たる実務は、生産技術でしたです。
現在は、どか、知りませんですが。当時の、品質管理は、品質改善のための、生産技術業務が主となってたです。
正直、その方が、面白く<笑>

での、
ロームは、その当時より、抵抗器屋から、半導体を含む、電子部品屋に間口を広げに掛かったです。

での、チップ<素子>は、全て、当初<開発>は、ローム本社です。
矢っ張り、40年程の前より、まずは、DIODEを岡山の工場<元々は、抵抗器前工程>で、製造するになったです。
<注=抵抗器前工程も存続>

そして、順次、TR等々、LEDも、そこで、製造です。
尚、現在唯今は、知りませんです。


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/18 (Thu) 00:57

 シバケン様、こんばんは。


 ロームは昔からLED作ってたですか。
 恥ずかしながら、初耳でして、当然ながらアルバイト時代も会社員時代もロームのLEDを製品に採用したことはなかったです。
 世界最高クラスの発光効率を実現しており、技術水準は高いようですね。枯れた部品ばかり製造してるメーカという印象を持っていましたが、誤りで、最先端部品を開発しているのですね。


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/18 (Thu) 01:07

 追伸です。


 品管よりも生技のほうが、創意工夫が出来て楽しいと、私も思うです。
 私は設計でしたが、良い製品を作るには、最上流工程から最下流工程まで一通りは知ってる必要がありまして、生技や品管の知識もそこそこあるです。


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/18 (Thu) 01:14

 追伸の追伸です。


 設計仲間には、失礼乍、知識の幅が広くないと思われる人も多かったです。
 例えば、部品メーカの営業さんと購入の折衝をしてたら、小切手と約束手形の区別がついてない始末。購買部門に丸任せでしたです。


【シバケン】 2014/12/18 (Thu) 02:30

所謂の品管と、設計<ロームでは、「開発」部門>とでは、喧嘩と、までは、申しませんですが<笑>
設計は勝手な事しやがってと、文句云いに度々でしたです<笑>

要は、開発品をスグに手直し<設計変更>して、工程に指示しまして。
その手直しがメモでして。
あのなあと<笑>


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/18 (Thu) 03:52

 シバケン様、こんばんは。


 現場を知らない設計は、工場泣かせですね。

 私の元勤務先では、設変通知を持って工場現場に行くことが、昭和の時代には、よくありました。難しい作業(微細な半田付け作業など)の実技指導もしたものです(設計者が実技を出来ると、工場(特に叩き上げの係長クラス)から、信頼されます)。
 平成に入ったころからでしょうか、正式に発行手続きを取った設変通知でないと、受け付けられなくなりました。作業内容指示も、生技を通す必要があるようになりました。


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/18 (Thu) 04:05

 追伸です。


 従前は設計の結果だけを図面化していましたが、私が設計するようになってからは、何故そういう設計にしたかの解説のドキュメントを、「設資」という名で正式発行するようにしました。
 調整や保守や後継機設計者や類似品設計者から喜ばれるようになったと同時に、教科書として設計者の勉強会で使われました。


【シバケン】 2014/12/18 (Thu) 07:42

正式書類<標準類等>があって、工程変更なり、する。

これが、昭和末期頃の、「ISO」ですねえ。
所謂の、ドキュメント管理。


>「設資」

コレ、結構ですねえ。
有り難いですねえ。
設計思想が、まず、あって、後継者に正確に伝わっての、次ぎのステップに進むが出来まして。


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2014/12/18 (Thu) 12:46

 シバケン様、こんにちは。


 設資に限らず、私の書いた図面は、製造に必要ないコメントだらけでした。
 「此処は~だから~を採用している」「此処は~なので~に設変禁止」「此の回路は~のために存在している」「此処のセットアップタイムのマージンは計算上は赤字だが~と~に同一チップ内の回路を使っているので実用上は問題ない」など。
 デジタル回路(論理回路)は、1と0の論理が正しければ動くと素人さんはお考えでしょうが、アナログ的な「波形乱れ」等の「パラメトリックマージン」を如何に確保するかが、高速回路設計者の「腕」でして。


【磯津(寫眞機廢人)@ThinkPad R61一号機(Win 7)】 2016/01/02 (Sat) 19:22

<参考=情報NO.656 [情報]洗面所照明のLED化(蛍光灯器具は、其のままで)