JR嵯峨嵐山駅前立ち話NO.3
嵯峨嵐山 NO.1 | 嵯峨嵐山 NO.2 |
目次
その60.隣家の火災事件(11) 余談(3)
その59.隣家の火災事件(10) 余談(2)
その58.隣家の火災事件(9) 余談(1)
その57.隣家の火災事件(8) 周辺騒々しく落ち着かん
その56.隣家の火災事件(7) 電気屋はん
その55.隣家の火災事件(6) 幽霊マンション
その54.隣家の火災事件(5) 京都新聞夕刊の記事
その53.隣家の火災事件(4) 煙草一服
その52.隣家の火災事件(3) 消防署の事情聴取
その51.隣家の火災事件(2) 窓ガラスのヒビ
その50.隣家の火災事件(1) 連絡受理
西山艸堂の湯豆腐もご馳走さん。目的地に向かうことになりました。
ソトに出れば、この界隈、ごった返してます。
渡月橋を渡るのも、何年ブリか。四条河原町やあるまいに、兎に角人が多いのです。
小学生の低学年の頃です。この渡月橋の付近で、水泳してた。町内からの遠足なんかと思います。
昔はナニかと云えば町内会。ベビー・ブーム世代で、同年輩の子も多かった。四条大宮始発、京福電車の嵐山線(嵐電)の終点がココ嵐山。乗車時間も二十分程度でも電車に乗れば、遠足やった。
テレビもナイ頃で、遊びも、カクレンボ、ケンケン、メンコ、缶蹴り。何処かの家にあがり込んでは、ママゴト遊び。ホカにはナンにもナイから、そんなことが一番の楽しみやった。
水泳などと、そんな頃では泳ぎカタも知りません。セイゼイ、水遊び程度。水泳パンツなんか、誰も持ってナイ。幼児でもナイから、パンツくらいは履いてたと思うけど。
一応、川やから、流れもアルし、水は冷たかった。スグにも唇が真っ青で、ガタガタ、ブルブルしてました。
それ以外にも、近所の兄ちゃんに、原付バイクに乗せられて、泳ぎに連れてもろたこともある。よお考えたら、原付で二人乗りは交通違反。ン十年もマエのことで、時効です。
大堰川には貸しボートがあって、乗りたかったけど、お金の掛かることなんか、口にするだに恐ろしい。云うた処で、アカンに決まってる。
ではあるけど、一回だけ乗ったよおな、乗ってナイよおな。夢のナカで、乗ったのか。
結果、寝小便で叱られてたり。小学生で寝小便はどおかと思うけど、低学年ならそんなモンです。
今では、嵐山なんかで水遊びをしたら、トンドモナイと叱られるけど、当時なら、普通やった。
川で遊ぶのも、危険なことではありますが、安全第一ばっかりが幅を利かしてしもて、あれはイカン、これもイカンと、イマの子は窮屈なこと。
その分、テレビ・ゲームで遊べます。結果、子供同士の交流が無くなって、人間関係も希薄です。可哀想な時代と思います。
誤解ナキよおに云うておく。嵐山で泳ぐことがヨイとは思てません。やたら、制限が多過ぎるのがドオかと思うのです。メンコ、ケンケン、缶蹴り等々、そんな光景見たことナイ。
お正月の羽子板、凧揚げも、見たことない。やるにも、車が多過ぎて、命がけ。
やったとしたら、下手な運転手が、プー、プー、ブー、警笛を鳴らしやがって、どなた様の道路かと錯覚してしまう。人間様の道路やゾ。警報なんか、五月蠅いわい。なんか、云うたら、キチガイ扱いで、銃殺されてしまいそお。
そんな昔のことを思い出しながら、渡月橋を渡ったのです。
渡ったサキに、嵐山公園。人が沢山で、出店もあって、リンゴ飴、クレープ、ソフト・クリーム等々売ってます。なにやら、縁日の夜店みたいな感じです。
天気はヨイけど、この公園近辺は、風が強い。
渡月橋のそのムコウが大堰川。渡月橋から手前が、桂川。景色も宜しい。
景色がヨイ分、風を遮る建物がナイから、テントも飛ばされるのやないかと、シンパイになる。
張るのも、手慣れたモンで、杭が数カ所で、ビクともしてない。ナニかコツでもアルのやろ。余計なことばっかり気になって。
ナンで、嵐山公園を通過したのか。
物集女街道を歩いたのでは、車が多いのと、公園を歩くホウが変化もある。サッキの話やナイけど、車も鬱っとおしい。
公園のサキには、阪急嵐山駅。昼間なら人出もある。夜になれば、ここらは怖いやろ。変質者が出没すると云う意味ではありません。単に危険な世の中になってるから用心に越したことがナイ。
そのサキは、阪急嵐山駅から物集女街道を松尾まで歩くことになる。ところが、車が多いし、歩道もありますが、道幅が狭い。人様より、車が優遇されてます。
方角は分かってるから、脇道にでもしましょ。
脇道は初めてで、どおなることかと思い乍ら、適当に歩けば、神社にぶつかった。規模と雰囲気からして、松尾大社やろ。正面に回るのも邪魔くさい。
横から入って、正面へ。折角のこと、お賽銭をチャリンで、鐘など鳴らして、何事かお頼の申し上げました。
ここはお酒の神さんですが、お酒に用事はナイから、家内安全、商売繁盛、欣求浄土(ごんぐじょうど)で、も一つオマケに、交通安全。
沢山云うた代わりに、お賽銭も弾みました。小銭の準備をしてなかっただけやけど。
ここから、物集女街道に出たら、面白くもナイ。
引き続き、脇道から鈴虫寺へ。それでヨイのかどおかも知りません。初めての道です。
おかしいとなれば、ソコ等の人に訊ねましょう。
行き当たりバッタリの気楽な散策です。
(00/04/13)
物集女街道を避け、間道を歩く分には車も気にならず。
車のホウが、用心深く、人様を避けてくれるのです。ソレなら、こっちも、気分ヨク道を空けてもやれるのです。
そお云えば、最近の大型団地では自動車の速度を出させんよお、プランタン等の設置をしてます。
お堅い話やけど、車優先社会は時代遅れ。もおソロソロ、人間様優先にしてもらわんと。
狭い日本、そんなに急いで何処へ行く。ドコソコのコンビニにでも買い物に行くのやろ。斯く申す、私も同類やけど、歩いてるトキは人間様の立場で、車のトキはその立場。
云うても、そんなに速度を出せる道でもナイ。曲がりくねった狭い道。ワゴン車同士なら、すれ違いも難しいのです。
それにしても、物集女街道から、チョッと離れただけで閑静な家並です。羨ましい家ばっかりで、何処かの社長さんのやろか。その代わり、買い物が不便やで。とは、嫁はんが申しました。
さて、知りもセン道を、フラフラ歩けど、肝心の鈴虫寺の気配がナイ。そこらの人にと思えど、閑静過ぎて、通行人が、お店もなあ。
よおやく、気のよさそうな、お爺ちゃんを見つけて、鈴虫寺はこっちの方向ですか。
そおですなあ。真っ直ぐ行って、こお行って、こお曲がって、こお行って。そしたら、そこが鈴虫寺ですわ。
この道でヨイのです。そやけど、分かったよな、分からんよな説明やった。その仕草からすれば、何処ぞから、ジグザグに進むことになる。
そして、ヒタスラ進みましたけど、ヤッパリこれでヨイのかなあ。ナンの気配もナイのです。道に迷うよおな場所でナシ。着いたサキがドンツキならエライこと。
佳い案配に、お孫さんを連れたお婆ちゃんが歩いて来ました。
この道で、鈴虫寺には行けるのですか。
そおですなあ。真っ直ぐ行って、こお行って、こお曲がって、こお行って。そしたら、そこが鈴虫寺ですわ。オナジよな説明されたけど、そしたら、オオテルのやろ。
ショオガナイし、そのまま進めば、聞いたことナイ神社があって、その横に有りました。道標がで、ナニか書いてある。
こっちが、鈴虫寺。あっちが、松尾大社。
ヨカッタなあ。
(00/04/14)
道は、真っ直ぐ行って、こお行って、こお曲がって、こお行って。
そしたら、そこが鈴虫寺ですわ。
ナルホド、最初の道標までは道ナリです。
そこからは、適時道標があって、それに従えば、ジグザグに進むことになる。
土地のヒトなら、そんな道標まで見てナイから、そおとしか説明のしよおがナカッタ。
道は、極普通。車が一台通れる程度で、民家ばっかり並んでる。ナカには、豪邸もありますが、豪邸と云えど、民家は民家。
そんな道を曲がって、曲がって、曲がってたら、突然茶店があったのです。いわば、鈴虫寺だけが頼みの売店です。
ナンとかのガイド・ブックに紹介されたお店であると、ノボリまで掲げてある。京都のガイド・ブックなんか、見た事が無いです。
そこでは、数人の若い女性客が餡蜜を食べたはる。ガイド・ブックに紹介されたら、繁盛するのやろ。外観なんか、つい最近の造りやないですか。
云うたら悪いけど、屋根が張ってなければ、道端で喰ってるみたいなモンで。車も通れへん道幅やから、邪魔にはナランけど、人間様には通行の邪魔。
鈴虫寺を拝観すれば、ご住職様のお講話が聞けて、お茶とお菓子が出ることになってます。こんな処で休憩することもナイです。その程度のことは、調べてました。
で、そのおムカイが、鈴虫寺也。
「着いたなあ。」
湯豆腐の西山艸堂から、小一時間。正直云うて、くたびれて、足がガタガタ。運動不足もヨイ処です。
さて、鈴虫寺は石段のウエ。何段あるか知りませんけど、シンドイことやなあ。
あがる人、降りて来る人。ギョウサンの人も、若い子ばっかり。ソノウエ、アベックばっかりで、コンチクショウめ。
よお考えたら、私等もアベックやったのに、すっかり忘れてた。
ところで、鈴虫寺がこれほどの人気がアルとは知らなんだ。苔寺が予約制になってからかなあ。それまでは知る人ぞ知る名刹也。
ここまでの道程が裏街道。すれ違たのはお爺ちゃんとお孫さん連れのお婆ちゃん三人だけ。マエには誰も歩いてナイから、そのまま、すんなり、入れると思たのに。
更には、石段の途中から行列です。これはエライことになったなあ。
幸い、行列も少しずつは進んでます。そして、門の前に彼の幸福地蔵さん。
それなら、ナカに入ることもナイのに、お茶とお菓子が欲しがな。
折角やから、ご住職様のお講話も、是非共お聞きしましょやないですか。
(00/04/15)
鈴虫寺は、華厳宗の禅寺。
通常は、「拝観料」としてますけど、ここは、「見学料」としてある。
いかにも、へそ曲がりの住職。料金、五百円也。
お茶とお菓子も出るから、そっちのホウが、楽しみです。
沢山の人やから、どおするのやろ。出すとしてあるから出すのやろ。
ナンで、そんな心配したのか。
私は京都の神社仏閣なら相当数拝観してますが、イマダカッテ、お茶、お菓子を頂いたことがナイのです。
勿論、出る処もあります。お茶と和菓子。そのお茶も玉露やったりして。但し、拝観料とは、ベツ料金です。
茶道の心得もナイから躊躇してしまうのです。深く考えんでも、単純に飲めばヨイのですが、お茶を飲みに来たのではなくて、拝観に来た。意地張って、真相は懐具合が寂しいだけです。
お茶にお菓子のことばっかり云うてたら、余程、茶菓子に釣られて、来たみたい。正直云うて、それもアル。
行列に任せて、進んだサキは収容人員百人程度の和室講堂。そこには座布団と長机が準備してあって、机のウエにアッタがな。期待のお茶、お菓子。
ナルホド、ナルホド、ウソではナカッタけど、玉露でもナイ。多分なら、番茶とそれ相応のミニ干菓子。
私は煎茶、番茶、緑茶、ウーロン茶、ナニを飲ませられても、ミナオナジで、玉露だけ区別が付きます。
干菓子も和菓子は和菓子なれど、京銘菓の生菓子を期待してたけど、込み込みで五百円ではムリやった。
その包みに、「寿々むし」と書いてあるから、特注のお菓子ではある。ナルホド、ナルホド、へそ曲がりで、駄洒落好きの住職です。
講堂はホボ満員で、ご住職の講和も始まってました。
マエもウシロも、何処も彼処も若いカップルばっかり。そのナカに、私等くらいのが、間違おたみたいに混ざって、場違いみたい。されど、こんな場に若い子が来るだけでも安心です。
清水寺にも似たのがアル。こちらは、若い女の子で行列を成すらしいです。境内の地主神社で、縁結びの神さんがアルからや。
地主神社とは、本来土地を鎮守する神さんで、地主権現様を奉り、土地を守るとは五穀豊穣を祈ること。
つまりは、豊かな実りを祈ること。ここから、恋が実りますよおにとナルワケです。
地主神社には一対の、「恋占いの石」があって、眼をつぶり、石から石へと、たどり着ければ、恋成就。その間隔、約七メートル。クレグレも、恋敵を邪魔したらアカンのです。正々堂々戦うのが肝要也とか。
お賽銭も、割り切れる金額はダメ。縁が切レンよおにと、一、三、五、七、十一円。
桁がチガウ分には、地主権現様も、大目に見てくれる。単位が万円なら大喜び。
知ったよおこと云うて、地主神社には参詣したことはナイのです。素通りだけで、どんな石かも知りません。
ナンでも結構です。そおいうのにすがる気だけでも、微笑ましい。
にも関わらず、ご住職のお講話を聞いてるのかなあ。あっち向いたり、こっち向いたり。もしかして、ご自分の相方とホカのを見比べてたりして。アレには勝ってる。コレには負けた。
そおかと思たら、コソコソ、話をしたり。ではアルけど、コソコソしてるだけマシです。
親の放任主義も宜しいが、ナンでもカでも放任主義は我が儘放題し放題となる。
我が子は個性豊かな人間であれ。自己主張が出来る子であれ。されど、余所さんにも個性と自己主張がアルのを無視してる。自分だけよければ、それでヨシも、ハタ迷惑。
斯く申す、私はチャンと聞いておりました。
ご住職のお講話をです。
(00/04/16)
清水寺境内の地主神社には、「恋占いの石」があるわ、「えんむすびの神」もあるわ。
明らかに、縁結びを意識した神さんと云うことになる。
本来地主神社は主旨がチガウ。はっきり云えば、縁結びを商業化してる。ヨイよおに云えば、商魂たくましい。
こおいうのには、ナニかしら抵抗感がアル。それでも、若い子がヨイ意味での関心を持てば、それでも佳いのかとも思う。
核家族が多なって、祖父母だけが、因習を守り、その継承が何処かで断絶。孫になれば、ナニも知らんより、安心とも云える。
反対に、オウムにでも入信されたらエライこと。こっちには、商魂の裏に陰謀がアル。
こお云うのをバカにしよるより、すがってくれる子の気性は可愛いとも思う。
地主神社は東山。観光として、見るべきモノも沢山あって、人気も分かります。
鈴虫寺の人気はナンやろか。
縁結びとは謳ってナイけど、オナジ感覚やろか。
幸福地蔵さんが願い事を叶えてくれる。願い事がダレソレと結婚出来ますよおになら、縁結びとなる。それにしては、カップルが多いし、片思いではナイのやで。
人前でも、遠慮ナシ。ベタベタしてからに。今更、ナンヤナとも思うけど、恋の悩みとは、そんなモンやろか。私なんか、そんなことシタコトナイと、当時のことなど、忘れてしもて、ヤッカミばっかり。
講話の内容ですが。
鈴虫寺の幸福地蔵さんは、全国で唯一草鞋を履いてらっしゃるのです。
つまりは、旅支度され、お願い事をした人のお家まで、ワザワザ訊ねてくださってまで、叶えてくれるのですて。
訊ねて頂くためには、依頼者のお名前と住所をお地蔵さんにお伝えせねばなりません。忘れてしもたら、宛先不明で道に迷おてしまわれる。
お願いも、実現可能なことにしてください。SMAPの木村拓也クンと結婚したい。コレは幾らナンでもダメですよ。気持ちは分かりますが。
ショッチュウ、お顔も拝見して、多少のお話もして、お互いを認識してることが条件です。
そやから云うて、相手さんが結婚してるのもダメです。不倫はお断り。
既婚者が赤ちゃんを授かりますように。貴方のお母さんの病気が治りますように。そおいう身近なお願い事が宜しいです。十年も二十年ものサキのことは避けること。
お願い事が叶えば、お地蔵さんにお礼を云いに来てください。そしたら、マタ次ぎのお願い事をお頼みすればヨイのです。
一つずつ、一つずつ、夢と希望を叶えるのです。十年二十年サキのことも、まず一歩から。
そんな具合に、何回でも、お地蔵さんにお頼みしてください。叶ったトキが期限切れ。
そのお礼です。お地蔵さんはお寺の門のマエにおられます。鈴虫寺の門を潜るマエ、マズは、お礼を申し上げてから、門をお潜りなさい。それが、お地蔵さんへの礼儀です。
さて、ここでお守りのことを教えましょう。
お願い事をするトキはお守りを手に持ってスルのが宜しいです。両の手で被せるのです。
お守り全部を掌(てのひら)で被せたらアキマセン。半分かそこらはソトに出すこと。お地蔵さんにお札が見えてますよおに。そんな気持ちでお願いしなさい。
お願いしたら、そのお守りは肌身離さず、持っててください。財布のナカでも結構ですよ。
そやけど、お守りには出来ないこともアルのです。家内安全、商売繁盛。これはダメ。お守りは個人に対するものなんです。
こっちのホウは、お札さんの担当です。お札は太陽が出てくるホウに向けること。
太陽が出るのは、東南の方向です。場所がナイなら、東、南でも構いません。
且つ、頭のウエにアルことです。頭のウエなら、見上げることになる。間違っても、お札さんを見下げてはイケマセン。釘で打ち付けるのもアキマセン。テープで張るのは結構です。
そして、毎日見上げて、お手を合わせなさい。家内安全、商売繁盛と口にしてください。
これの期限は年内一杯。来年は来年でお札を求めてくださいね。
ご住職のご講話は、ユーモアと説得力があって、ナカナカのモンでした。
こんな先生なら、授業も面白いです。
(00/04/18)
神社仏閣なら、アチコチ参詣してます。
それでも、ご住職の講話を聞かせて頂いたのは、これが初めてで、ご住職の講話なるものが、如何なるものかと、関心もあった。
講話のナカで仰ってました。そもそも、禅寺ではお茶とお菓子を出して、おもてなしスル慣習がある。
それに従って、ここ鈴虫寺では、人数がどれだけ大勢であろおとも、お茶とお菓子で、おもてなしすることにしてるのです。
この話に間違いナシ。眼のマエには、お茶とお菓子が置いてある。
講話の間は失礼やから、お預け喰って、口にしてませんでしたが、そのお話が出たと云うことは、ボチボチ戴いてもヨイのやろ。
「寿々むし」の包装紙を開いて、戴きました。喉も乾いてるから、お茶も美味しいです。お菓子のホウは、もお一個、欲しいと云うホドでもアリマセン。
お住職のお話は続きます。
お茶とお菓子のことです。
まず、これだけの人数分。揃えて出すのもタイヘンな作業です。お茶椀は一カ所に集めて、回収しやすいよおに、ご協力してくださいね。
更にお菓子のことです。
皆さんお一人お一人の眼のマエには、「寿々むし」と云う名のお菓子があります。
これを、「ジュジュムシ」と読んでくれるヒトもありますが、「すずむし」と読むのが正しいです。
これは、鈴虫寺の鈴虫から取った名前で、鈴虫のことです。
年中鳴いてますが、一匹一匹の寿命が短いので、供養のため、お菓子に、「寿々むし」と名付けてやりました。
鈴虫の亡骸を供養してやることも大切なことです。
そこで、お寺では鈴虫の亡骸を集め、ハネを取るのです。カラダだけにして、それをすりつぶしてやるのです。
お菓子をヨク見てください。黒いポツポツがありますが、それが鈴虫の亡骸です。すりつぶしたモノをお菓子に混ぜてるのです。
鈴虫は皆さんに食べて戴けるのが一番の供養。味わって、食べてやってくださいな。
この住職は、エライことを云うたのです。
鈴虫入りのお菓子。確かに黒いモンがありました。それが鈴虫の亡骸らしいけど、もお食べてしもてます。
ソンなコト、サキに云うてクレ。
私は甘党です。鈴虫の供養には協力もしたい。お腹も空いてますが、食べるのだけはご遠慮申し上げたい。
供養なら、ホカの方法もアルやろに。されど、手遅れです。全部胃袋のナカ。今更吐き出すことも出来ひんし。
講堂ナイも、そのクダリでざわついた。
こお見えても、私はゲテモノ好きではナイ。鈴虫がせめて漢方薬として、ナニかに利いてくれるのなら考えんこともナイ。
供養とは云え、鈴虫をすりつぶすとは、ソレこそ残酷物語とチガウのか。
亡骸と云えば、エジプトのミイラのことがアル。その昔、不老長寿の薬として重用されたらしいです。どないして、服用したのやろ。想像するだに恐ろしい。
とは云え、信ずる者は救われたらヨイ。不老不死がウソと云うのは、歴史が証明してるけど、昔の事やから、ペテン氏にヨイよおにされたのか。
不老不死を望むなら、金満家、権力家がやればヨシ。私はそこまでしては望みません。下手物はキライ。猟奇趣味もナシ。謹んで天命を拝受致しますので、構わんといてクレ。
人間のミイラと鈴虫の亡骸では、比較対象に差がアリ過ぎる。鈴虫の供養には賛同しますが、ベツの手段でやってクレ。
「ご安心ください。それは冗談です。
お茶碗だけは、揃えてくださいね。オシマイです。」
ナンや。冗談かとホッとした。
講話も長かった。
ホッとしツイデの話です。鈴虫の供養に亡骸を喰えばお願い事は必ず叶う。
そんなことなら、皆様、どおしますやろ。
講堂には我がネタ話の鈴虫の音が絶え間ナク、鳴り響いてます。
(00/04/19)
ご住職が鈴虫の亡骸を集め、すりつぶし、干菓子に混ぜ。
そんな話をするから、ミイラのことを思い出したのです。
イマは、そんなことしてナイとは思うけど、その昔、西欧の人はミイラをすりつぶして、粉にして、万能薬として、愛飲したのです。
その噂が、何処でどおなったのか、南蛮渡来の不老不死の薬として日本に伝わった。
南蛮渡来と云うだけで、薬、百層倍が万層倍。高価な代物となり、庶民のお口に入るはムリとなり。私は聞くだけでも、イヤになる。
世の中には、古来より万能薬と称するものが山程アル。ナニもワザワザ、ミイラを摂取することはナイのに。
脱線ついでに、マムシ、スッポンの精力回復。ハタマタ、大道芸人の口上、かの有名な、血止めの薬、蝦蟇(ガマ)の油はどおやろなあ。
これは、立派なお薬で、それなりの効能が認めらてます。
インチキ臭い蝦蟇の油。そもそも、四六の蝦蟇が実在スルのかしないのか。
蝦蟇の油とはしてませんが、センソとして実在する。しかも、極身近な薬、六神丸、救心に含まれてるのです。
さりとて、大道芸人の口上宜しく、筑波山麓に生息すると称する、前足指四本、後足指六本、合わせて、四六の蝦蟇。鏡に映る己の見難い姿カタチを見てしもて、驚愕仰天。
脂汗をタラーリ、タラリの脂汗とは違うのです。そんな宣伝するから、インチキ話になったんや。
カエルはカエルでも、ヒキガエル。それの耳下分泌物には、強心、止血、麻酔作用があって、戦国時代の必需品。
つまりは、歴史的に立派な実用的お薬で、それにしても、このことがヨオ分かったものと、中国四千年の歴史は凄いと驚愕仰天してしまう。
それでも、鈴虫の亡骸は漢方薬の一員には登録されてません。
さて、鈴虫寺の鈴虫の音は講堂一杯に鳴り響き、ご住職の講和のアトで鈴虫も拝見。
お守りとお札も買い求め、お庭を一周すれど、ナンと云うこともナシ。
御門を出て本命の幸福地蔵さんをお尋ね致しました。当然、お願い事をするためです。
そおそお、まずは名前と住所やなあ。それが簡単なよおで難しいです。イザとなれば、上がってしもて。それで、ナニを頼んだのか。
私も欲深い人間です。一つなら、ナニがヨイのか。アレコレ、あり過ぎる。
家内安全、商売繁盛はアカンし、所得倍増も、基準が不明。ウシロもつかえ、モタモタしてたら、迷惑やナと、焦ってしもて。そして、帰りしなです。
シモタなあ。耳鳴り解消を頼んどいたらヨカッタ。
鈴虫の音が、まるっきり、ソレやがな。同化してしもて、忘れてた。
(00/04/21)
嵐山の桜も、スッカリ、痕跡程度。
この話は、その桜が咲くマエのことです。
目的地の鈴虫寺もお参りして、帰路に就きました。
ここを、こお曲がって、こお行って。マタ曲がって、付いたサキが松尾大社。
往きしなに通った道やから、迷うこともナイ。途中、道を訊ねたお孫さん連れのお婆さんとすれ違て。さっきはどおもスミマセン。
それより、足が痛なってしもて。もおアカン。
運動靴を履いたらヨカッタのに革靴。靴擦れが出来てしもて、この調子で嵯峨まではムリ。
そんな次第で、阪急電車に乗ることにした。
阪急嵐山線の松尾駅から、嵐山駅はたったの一駅。嵐山が終点やし、そっち方面行きのプラット・ホームなんか列車を待つ人が居てません。
お向かいのプラット・ホームで待つ人が、こっちを見てる。もしかして、嵐山まで乗るのかなあ。私をそんな風に見てるのか。それとも、考え過ぎやろか。私も乗るツモリはナカッタ。タマタマ、靴擦れが出来ただけです。
それにしても、モッと長距離でも音を上げることもナカッタのに、今回はあくまでも靴擦れの責任大。アキレス腱付近も痛いことは痛い。運動不足も認めます。
嵐山まで、戻って、折角やから、天竜寺でも。
加山叉造画伯が修復されたと云う、龍の絵が拝見出来るらしいけど、千円やて。
嫁はんにそお云うたら、只やったらヨイけど、勿体ナイ。そのお金でナニか甘いモンでも食べるホウがエエなあ。
それもそおです。干菓子の口直しにコーヒーでも飲もかいな。
お腹も空いてます。ショート・ケーキも食べたいし。嵐山商店街の喫茶店に入りましょ。
ツイデのことに、晩ご飯のオカズも、ここで買おてしもたら、ラチがあいて宜しい。
この界隈では、道々歩き乍ら、コロッケを頬張ってる人も多いのや。観光地やから、それでも、佳いのやろか。道にはボロボロ、こぼしてる、オッサン、オバハンがです。
美味しそに見えるから、コロッケを晩ご飯のオカズに買おて。
ついでに、出汁巻き、パンも買おて。明日の朝の分まで、調達してしもた。
(00/04/22)
眠うて、眠うて、寝てバッカリ。
昨日、嵯峨のホウを、ン万歩。
ン万歩云うても、一万歩とチョッとくらいで、クタびれたのか、寝てバッカリ。
グースカ、グースカ。
イビキをかいてまでは寝てないけど、炬燵も暖かいから、気持ちが佳いもんで、ツイツイ、寝てバッカリ。
誰かが、ナニか云うてるのは聞こえてます。テレビもツケッパナシやけど、ナンにも記憶してません。
気がつけば、二男がソバに居たから、イツ、帰って来た。
大分前に帰ってる。タダイマ、云うたら、お帰り云うてたやないか。
ソオ云われたら、ソオやったかなあ。
嵯峨を万歩はエエけど、拝観料、お賽銭、飲み食いと、お買い物でン万円使て。
このン万円も、一万円とチョッとくらいですが。
嫁はんと二人やから、ソンなモンやろか。
イマ時何処へ散策でも、お金ばっかり掛かってシヨウがナイです。
拝観セズ、お買い物セズ、飲み食いセズで、歩くだけなら、お金不要やけど、ナンにもオモシロないからなあ。
適当にお金を使うから、オモシロイのかなあ。
(00/11/20)
その50.隣家の火災事件(1) 連絡受理
我が自宅は亀岡です。前日の就寝午前二時。
何故かこの夜は寝付かれず。朝の早くから目は覚めて、起きてしまおかドオしよかと、迷てたら、我が携帯電話でお呼び出し。
着メロから判断して、悪戯ではナイ。表示から、誰かも分かる。
そもそも、彼が電話してくれるのは初めてです。私も電話魔ではないから、滅多に掛けることもナイ。
ツマリは我が携帯電話のメモリーなるもの利用することがナイから備忘録にも劣る存在。
そんなことはドオでもヨイ。飲み会招集程度の話ならメールです。時間帯も可笑しいから、マズ、ヨイことではナイ。
電話の主は会社の同期生。しかも、我が隠れ家であるマンションのソバ。ソバもソバ、窓を開ければ、目の前が住処。
無論、そのことを知って借りたのではナイのです。賃貸契約したら、業者がマンション周辺の地図をくれて、ソレに彼の氏名が記載されてた。
そんなに珍しい苗字でもナイ。さりとて、大凡住所がその近辺とは知ってたし、姓と名から、もしかしてとは思てたのです。
タマタマ、マンションに持ち込む予定の机に椅子。本棚等を物色で、国道九号線沿いの京タンスに行ったとき、バッタリ会おて、確認したら正解でした。
そんなことはドオでもヨイのです。さりとて、重要な話です。この前提が分かれば、この話も分かる。
「オイ。マンションの隣の家が燃えてるで。」
「隣て、どっち隣やな。」
「南のホウや。ボオボオ燃えてるで。オマエの部屋の窓ガラスにヒビが入ってるみたいやし、中もドオかな云うてるから、早いこと来たホウがエエで。」
「ソッチはどおなんやな。」
それで、ご当人の住処のことを聞こおとしたら、切りよった。
まあ、電話して来るのやから、大丈夫やろ。
その三十分後には、管理人さんから電話です。
「隣が出火しまして、全焼です。」
いきなり、この話が飛び込んだらビックリ仰天やけど、知らされてたから、落ち着いたモンです。
「イマ、火は消えましたが、部屋のナカを確認させて戴いても宜しいですね。」
「ハイ、結構です。」
と、軽く回答。
確認さしてくれとのことなら、大したことナイのやろ。類焼なら、ソレどころではナイけど、隣が全焼と云うたなあ。
ちなみに、部屋のナカなら、余所さんに見られて恥ずかしいモンはナニもナイです。
適当に散らかしてますが、帰宅前には整理整頓してるから大丈夫。
特に火の用心には注意して、主たる電気は幾度も確認してる。チェック・シートまで掲げてるから、家主っさんも安心してくれるやろ。
焼けて困るのはパソコン程度。イヤ、もっとある。大切なパソコン・ソフトCD一式に、MS−DOS時代の懐かしきソフトがフロッピーが全部保管されてます。
マダ有ったなあ。現金なら、総額数百円がドナルド・ダックとミッキー・マウスの貯金箱に収納されまする。
貯金箱は郵便貯金口座を開設したトキ、ボランティア活動で、利息の二十%を拠金してくれと局員さんに睨まれた。
どっちみち、ナキに等しい利息なれど、そのウエ、マダ盗られるのかと思案。
にも関わらず、同年輩のオッサン局員さんから、ご主人様是非共ご協力をと、ポンと背中を押されてしもて。
イヤ、知れてますよ。利息からです。そのお金で世界の子供達が救われるのです。
ニヤリと出っ歯の前歯も見せられて。それでも、縦には首振ってナイ。
そしたら、新規口座開設とボランティア基金協賛で抽選が二回出来ますよ。しかも、空くじナシですよ。
更に背中をドスンと押され、すぐさま目の前にはくじの箱を突きつけられ。
空くじナシやなあ。そしたら、ナニか当たると、ツイツイ二回引いてしもた。
結果、ドナルド・ダックとミッキー・マウスの貯金箱。早い話がお子さま用。
その貯金箱には、釣り銭で貯まった一円玉、五円玉と十円玉を保管してるのです。
(01/03/23)
その51.隣家の火災事件(2) 窓ガラスのヒビ
マンションの一室には、ディスク・トップ・パソコンと机に椅子に本棚三点。
本棚には読む、読まんはベツにして、本を陳列してるし、押入には最早着ることのなくなった、スーツ十数着を保管。
そして、テレビと木製のテーブルと椅子二脚。
細かなことはナンですが、余所さんには一銭の値打ちもナイ、貴重な資料が山程と、ナーキーさんから戴いた、スヌーピーの置き時計はパソコン・ラックに。
るーちん画伯の花の絵葉書は一番上等の本棚のウエに飾り、とある知り合いから戴いた、王ダイエー新入団の背番号17山田秋親投手直筆サイン色紙は頭上。
まだ有るのです。十年マエの最新鋭機、HDD250Mb、NEC製MS−DOS対応白黒ノート・パソコン一台。一年マエから、ウンともスンとも返事さえしてくれませんが、ホカすのもナンですから、保管。
その他、文房具に湯飲みコップとティッシュに、ゴミ箱。コーヒーに砂糖にクリープに、おやつに種々諸々等々。そんなモンが詰まった一室です。
ついでに、二男の新品ヘルメットとジャンパーを数日マエから保管させられてます。
三月一杯、大学の学外実習とやらで、桂の三菱京都病院に通うので、丁度ヨイと、JR嵯峨嵐山駅裏手の駐車場にバイクを置くことにしたのです。
私財はその程度として、出火元との位置関係を説明することにする。
まずはマンションも出火元も、JR嵯峨嵐山駅前通りの西側に位置し、マンションの隣が出火元。間にはナニもナシ。
マンションと云うても規模は種々雑多。隣と云うても、片田舎なら数百メートル、数キロ離れてることもある。
借りてるマンションは京都市右京区のJR嵯峨嵐山駅前で商店街、住宅の密集地。隣と云うたら、ホンマの隣や。間に空間ナシ。有っても壁と壁の間隙セイゼイ数センチ。ネズミ一匹なら通行可能で、猫は無理。
マンションの規模は土地十五坪程度の敷地に鉄筋3階建。一階が喫茶店で二階と三階に各二室の計四部屋。出火元も、そのくらいの土地で木造二階建。
マンションの構造も至って簡単。
東側一室、西側一室で、私は三階の西側の部屋。自慢は見晴らしのヨイことなれど、窓はカーテンで目隠しです。
イヤ、覗かれて困るよおなことしてませんが、住宅密集地のため。
我が部屋は東が出入り口で、お向かいさんが一室有るだけ。西のベランダから下を見れば、道幅三四メートルの路地がアリ、正面には彼、つまり、早朝に第一報してくれた、同期生の邸宅が存在する。更に目をウエにすれば、建物の間隙を縫って、嵐山を眺望出来て、北にはトロッコ列車の嵯峨駅と北山が望めます。
南に目を転じれば、眼下に物干し台が有る。実にその物干し台の家が全焼したのです。
彼の第一報が六時半。「ボオボオ燃えてるで。」
火元の場所からして、彼も悠長ではナイ。路地幅数メートルしか離れてナイ。
第二報が七時で家主さん。
隣が全焼で、イマ、鎮火した。我が部屋の南側の窓ガラスにはヒビがある。
室内の被害状態確認の為、入室承諾してくれの旨と、消防署が九時半から事情聴取するから、来てくれとの依頼。
隣が全焼で、窓ガラスにヒビ程度で収まってるのか。南の窓には、カーテンが掛けてあり、パソコンもテレビもそっち側なんや。
本棚も置いてるし、テレビのウエにはミニ・サボテンもある。高温でのヒビなら、カーテン引火の可能性有り。ナカは無茶苦茶なことも想像する。
それなら、延焼を防ぐため、窓ガラスなんかは叩き割り、消火活動してるやろ。ガラスのヒビ、ワレ、トケ(溶け)と叩き割るでは状態が違う。
兎に角、あれこれ考えてるよりも現場に行くのが先決です。
そのマエに先ほど紹介の二男がJRで嵯峨に保管のヘルメット等を取りに行ってるから、携帯電話で確認することにした。
「どんな具合や。」
「ガラスにヒビが入ってる。」
「ナカはどおなんや。」
「ドオもナイで。」
既にドアの鍵は開けられており、ダレかが窓ガラスは替えなアカンと云うたとか。
その程度で済んでたら結構なことやけど、ホンマに隣は全焼したのかなあ。
(01/03/25)
その52.隣家の火災事件(3) 消防署の事情聴取
二男の情報で、安堵してしもた。ナンと云うても、室内を見ての話です。
もしかして、全焼とは大袈裟で、ボヤに近かったのではないか。
それはソレとして、消防署の事情聴取がある。マンションは自宅亀岡から車で小一時間。
現場に到着すれば、騒々しいことになってます。
マズ、マンション前には大型消防車がドッカと一台。関西電力作業車一台。
消防署員十数名がウロウロしてるし、関西電力が電線の補修作業。既にNTTは作業完了で帰ったらしいです。
家主さんに喫茶店店主とマンションの住人らしき女性と、野次馬数十名。
家主さんと喫茶店店主は離れた場所に棲み、私以外の住人三名はここで寝泊まりで、オソラク、短大生と推測してる。
ナニよりも、全焼は間違いナシで、屋根は辛うじて、半分残ってはいますが、ナカは柱からナニもカもが丸焦げ。有ったハズの玄関ガラス戸は跡形もナク、裏手の家が丸見え状態。
布団類は、これでもか、これでもかと、ビショビショのウエに、マダマダ水浸しにされて、念入り過ぎる程に放水されてます。
そんな状況を観察しながら、喫茶店店主に、
「大変でしたねえ。ナカはドオなんですか。」
「これから点検です。放水でナカはアカンでしょう。」
「寝たはったのに、ビックリされたでしょう。」
「イヤ、ここでは寝泊まりしてナイのです。」
そんな話の最中に、消防署員が寄って来て。
「これから、事情聴取致します。
ウエの階から順にやりますが、貴方は何処の部屋ですか。」
狭い階段を上がり乍ら、何号室のナニさんで、どんな字を書くのですか。
「部屋で書きましょう。」
「そおしましょう。」
部屋の鍵は開いてます。
室内を一通り見渡せば、二男のヘルメットとジャンパーが消えてるのと、皆様仰るとおりに、南側の窓ガラスにはヒビがアル。
それ以外、いつもの風景と変わることナシ。心配した南側のカーテンも焦げた様子すらナク、窓際にも水一滴、侵入セズ。部屋には少々の埃が舞ってる程度。
私の目で見た限りでも、隣家は間違いナク全焼で、益々不思議な気分。
「テレビ・ドラマでもやってるでしょう。
その通りのことをお聞きしますので、宜しくお願い致します。」
テレビ・ドラマなんか、余り見てナイから、その通りと云われても、分かりません。
その時間帯はナニしてた。イヤ、亀岡の自宅に居てました。とでも、なるのかなあ。
「それは警察の仕事で、ここが火元ではナイので、ご心配ナク。」
「火災は今朝五時五十九分に発生しました。」
それなら、六時でヨイのでは。六時にすると、ナニか不都合でもあるのかなあ。
「その時間に連絡を受理したのです。」
お尋ねしたいことは、ご住所、ご氏名、生年月日に、電話番号とご職業です。
それで、ご住所はここでヨイのですねえ。」
「イヤ、違うのです。亀岡でして、字がヤヤコシイから、書きましょう。」
実は、この話が一番の苦手。特にご職業がねえ。
「何処の会社か書いて戴ければ結構ですよ。」
「会社には勤めてナイのです。」
「ハイハイ、それなら、自営業か自由業。どっちが宜しいですか。」
「それなら、自由業にしといてください。」
(01/03/26)
その53.隣家の火災事件(4) 煙草一服
消防署の事情聴取はそれだけで、アトは被害のお話です。
「この部屋の被害は窓ガラスと、エアコンのホースと室外機です。
こっちは家主さんが保険かナニかでやってくれます。
私財のホウはご自分でヨク確認してくださいね。
水が掛かって、パソコンが動かんとか、テレビがアカン。焦げてる、破損した。等々です。
イマはナンですから、あとで結構です。あれば、署まで連絡してください。無ければ、必要ありません。
それと、電気が止められてますので、電気系統はマダ確認出来ません。それ以外は全て復旧してます。電話ですねえ。ガスですねえ。そんなモンですかねえ。
但しです。電気系統が復旧しても、エアコンは動かさんといてくださいよ。
動かしたら、ススと埃がドカッと室内に舞い込んで大変なことになります。」
「それで、消防署は何処に有るのですか。」
「知りませんですか。あのですねえ。
嵯峨出張所は、そこの道を東に百メートルです。ここからなら、歩いて数分ですし、スグ分かります。一応電話番号はコレで、私はコレで、イツでも呼び出してください。」
ところで、私はこのマンションを中心に、東西南北の東方面は知らんのです。
一二度ならナニかの間違いで、通ったことはありますが、消防署が有ったかドオかまで、気にしてませんでした。
西なら、天竜寺と嵐山で、時々散歩してます。
北はJR嵯峨嵐山駅で、その裏手には駐車場がある。
南は桂川で、毎日車で走ってますが、東には用事がナイ。
なるほど、それで、消防車に救急車がヨク走ってるのか。今更乍ら合点した。
更には火災発生の通報から、到着までが短時間。類焼を防止出来たのです。知らぬが仏とはこのことや。
その署員さんが、退室したら、ベツの署員さんが入って来て、
「罹災状況を申告する用紙がありますから、渡しときます。」
くれたのは、「り災状況表」「り災申告書」「り災証明申請書」の三枚。
ご親切に一通りの書き方を教えてくれて。それは結構ですが、署員さんが入れ替わり立ち替わり、部屋に来ては、又教えてくれて。
次第に教え方が親切となり、このよおに書くのですよと、ウエから鉛筆でなぞってくれて。
さっき、聞いたから結構です。とも云い辛いから、
「ハイ、分かりました。左様に致します。」
神妙なる返事して。
都合、三名さんのお名前までお聞きして。一巡したら、お向かいさんの部屋が満員御礼。狭い部屋で余計です。
何処もドアは開けっぱなし。一応、そこは女の子の部屋ですから、私は意識的に覗いてません。
そこえ、第一報を伝えてくれた同期生が階段を上がって来た。
「おお、来てたか。」
「自分処はどおやった。」
「お陰さんで、どおもナイなあ。」
「よかったなあ。」
それにしても、お互いに目立った被害もナク、ニコニコと気楽な会話が出来ました。
その彼は会社入社時の同期生。学科は違うけど、オナジ大学でもあって、あっちは機械で、私は電気専攻。勿論在学中はお互いの存在は知らなんだ。
会社では仕事上、多少の縁はありました。その彼もイマや会社のエライさん。息子の就職問題で、どおしてもと頼めば、ナンとかなるかなあ。
さて、彼のホウは、本日岡山工場に出張予定が、こんなことで取りやめたとか。
ソラ、家の真ん前が火災では、それどころでナイ。
彼の登場で、よおやく一服出来て、煙草をですが。
やっと、我が部屋と火災現場を検証したのです。
(01/03/27)
その54.隣家の火災事件(5) 京都新聞夕刊の記事
ここで、当日の京都新聞夕刊(三月二十二日付け)の記事を紹介してオク。
『右京、民家全焼一人が死亡(一人暮らし女性か)。
二十二日午前六時頃、京都市右京区嵯峨天龍寺車道町、無職−削除−(七十六歳)方から出火、木造二階建て約九十平方メートルを全焼した。消防隊員が焼け跡から女性と見られる一人を運び出したが、全身やけどで死亡した。
太秦署と京都市消防局によると、−削除−は一人暮らしといい、亡くなったのは−削除−さんではないかとみて身元確認を急ぐとともに、出火原因を調べている。
119番通報した近所の住民(六十四歳)は、「気がついた時には、煙が出て家の中が赤くなっていた」と話していた。
現場はJR嵯峨嵐山駅南側の商店や住宅が立ち並ぶ一角。』
となってます。
新聞には写真も掲載されており、消防隊員の放水作業、隣接のマンションと、その三階にある我が部屋の窓まで写ってます。
隣のお婆さんとは、会話を交わしたことはナイですが、顔は知ってます。観光客相手に荷物の一時預かりを切り盛りしてた気の良さそうなお婆さんでした。
お婆さんのことは、新聞情報よりマエに彼から聞いてました。
「出口付近に倒れてたみたいやなあ。病院に運ばれる途中で死んだよおやで。」
「そんな早い時間から起きてたのか。」
「年寄りは早いからなあ。」
この辺りから、次第に火事の状況が分かって来た。
マズは窓ガラスのヒビ。
火に炙られ、ヒビ割れたと推定するも、ガラスはワイヤー入りのため、辛うじて高温に耐えられた。普通のガラスなら、アカンかった。
窓から下を覗くと、物干し台は丸焦げに焼損すれど、ここだけ原型を止めてると云える。風の強い日など、この物干し台の竿がカタカタ唸って五月蠅かった。
彼の話では、その風向きが幸いしたとのこと。
西から東の風のため、彼の家も類焼を免れた。反対に東なら、彼の家も火の粉をまともに浴びることになって、危なかったのです。我が部屋のワイヤー入りガラスも、同様耐えらず、ヒビ割れどころではナイ。
南風ならマンションはまともに熱風を受け全滅。北風でも、火元の家は低いから、風を巻き込み、南風とオナジ状態になる。何故なら、路地幅2メートルを隔て、オナジく三階建てマンションが建ってます。南側のマンションの壁面には延焼の形跡はナイものの一階酒屋さんの表通りに突き出されたプラスチック製看板は熔けて、垂れ下がってる。
燃えた家の屋根は中央から崩れ落ち、ぽっかりと大きな穴が空き、あたかも煙突状態。
マンション一階の喫茶店は水浸しで止まったけど、私以外の部屋はどんな具合か。
云うまでもナイ。三階の我が部屋の向かいは、煙突に近い。二階は火元が目の前に位置してる。
実際の処、ホカの部屋の窓ガラスはヒビどころではナイのです。壁面には黒い焼け跡があり、窓は焼け落ち、放水され、部屋のナカは水浸しとのこと。
ここで寝泊まりの女性三名は身体的被害はナイものの室内は放水され、水浸しとなり、家具、寝具、全て無茶苦茶やて。
それこそ、人生に於いて、早々経験することのナイ業火に寝込みを襲われ、精神的には恐怖のどん底。
暫く、震えが停まらんかったとか。
初めて合おた、家主っさんとの話も交えれば、以上のことにナル。
イヤ、マンションの賃貸料など、銀行振り込みのため、この日まで家主っさんの顔さえ知らなんだ。先方は七十歳前後の男性で、ナンでそこまで、詳しいのか。見も知らぬ余所者にホカの部屋のことまでバラしてヨイのかなあ。
そんな疑問を抱いてたのが、途中こんなことを云うたのです。
「お宅さんのパソコンも、無事でよかったですねえ。部屋も全くの無傷で奇跡です。」
へえ、このお方が家主っさんやったのか。しっかり、ナカも見たのやな。されど、ナンの恥ずかしいこともしてナイし、隠しもしてないし。
先方が私を私と認識してたのは、不在者一名。その賃貸契約の内容からして、周辺でラシキ奴は私一人です。
ここまでの情報を総合してみても、もし発見が数分でも遅れてたら。風向きが東以外なら。
消防署が数分の近くでなければ。窓ガラスがワイヤー入りで無ければ。
我が部屋の私財は金銭的に保証されるとは云え、それは形だけのこと。お金に換えられんものもある。
無論、火災が無ければ、最初っからナンのこともナイ。結果として仮に私財が焼失したとして、それはそれで仕方ナシ。パソコンも最新鋭機になると思えば万歳となる。
資料と書物は困るけど、無くなったものはどおしょうもナイ。そのウエで、現に発生した火災。他界された火元のご老人は仕方ナイとして、マンションに住むホカの被災者には悪いけど、私など、恐怖体験もナク、私財も無傷。我が強運を改めて認識した。
話のついでにおもしろいことを云うてヤル。
月のお墓参りでは、墓前で斯様に申し述べてます。
ご先祖様よ、この生神様を粗末に扱えば、見放せば、お墓のご面倒、誰が観る。しっかり両目を空けて見守りなさい。
斯くの如く、毎月繰り返される我が指示命令脅迫のため、ご先祖様一同見守ってると、勝手に解釈してるのです。
(01/03/28)
その55.隣家の火災事件(6) 幽霊マンション
ご先祖様がドオコオとか、墓参が云々。
それなら、被災者は、お墓参りはご無沙汰で、ご先祖様を疎遠にした酬いで、因果応報、自業自得、自縛也。
とまあ、こんな意味にも取れますが、チとだけ意味合いは違う。
ご先祖様と常に接し、人質に取っておけば、大難は小難で、小難なら避けられる。
さは、さりながら、一番の問題は、先祖が子孫に余計な罰まで下す筈がないの自信が存在してる。これは、宗教の話ではナイです。
そのウエで、我が人生、振り返ってみれば、まだ天罰は下されてナイ。
とは云え、まだまだ我が人生、終焉してナイから、油断大敵、それこそ火の用心。
そやけど、お婆ちゃんがなあ。イヤ、私の母ですが、危ないのや。
火に水にお金から、家の扉に、それこそ厠の始末までもが無頓着。注意しても全然治らんし、この親は、一体誰に似てしもたかと、不思議な存在。
内輪の話はベツにして、マンションを借りてる女性も、身体的被害がナカッタから、不幸中の幸いです。
他界されたお婆さんにしても、モノは考えよお。出火と業火の恐怖と死の苦しみは味おたけど、サキにも申してます。
自らの失敗から招いたことで、自業自得。これが天罰かドオかなど、閻魔大王に聞かんことには分からんわい。
さりながら、人的被害が他に及ばず、罪一等免じられ、世間もショウガナシとしてるやろ。
これが他家に類焼のウエ、怪我人が出てたら、エライことです。
軽い怪我ならヨイけれど、マンションの誰かが死んでしもてみいな。
この部屋には私たった一人です。夜も更け、周辺が暗らなったら、気持ちのヨイことはナイ。招かれざる幽霊様、こっそりご訪問の妄想駆け巡り、まさしく、幽霊マンションと化す。
それならと、寂しさ紛らすため、テレビをつけて、運悪く、恐怖番組でもやっててみいな。発狂するやも知れません。
そのマエに賃貸マンションなんか、どのみちナンの義理、拘束もナシ。ホナ、サイナラと、サッサと撤退してしまえ。
幸いそんなことはナカッタので、私はそのまま居続ける所存。
ですが、火災発生二日目にして、一階の喫茶店と私を除いて、もぬけの空。まだ、契約解除したワケではありません。室内水浸しで、窓は破損で仮設置。若き女性なら、不用心で居てられますかいな。
とか云い乍らも、ホンマにご退散なら、ぶちまけたりたいことが山程ある。居てる限りに於いては、諸般の事情も考慮し、掲載は避けておく。
まあ、そんなことはアト廻しで、火事の話を続けにゃならぬ。
二人して火災状況の検証も終われば、やることナシ。煙草を吸い乍ら、久しぶりに会社のアイツがコオなった、アアなった。ついでに、パソコンの話もして。
トキたま、思い出したよおに火災の話もしたりして。
「エアコンが新しなったらヨイのになあ。」
「煙草のヤニだらけやから、替えてもらわんと。」
「室外機とホースだけの交換やったら、引っ越すで。」
「暫く動かせんでも、この時期でよかったで。寒かったり、暑かったら大変や。」
どっちみち、電気系統は死んでます。テレビ、パソコン、電話に電灯。お湯を沸かしてお茶さえ飲めんのや。
かと云うて、こんなトキ、餓鬼やあるまいに、この歳でテレビ・ゲームしてるのも不謹慎。
イヤ、誤解ナキよおに云うてオク。我が部屋に、ゲーム機類は存在してません。ヨオ使いこなさんと告白してオク。
それもありますが、こんなトキ、ナニがあって、誰が来るかも分からんから、部屋の扉を閉め切ることさえ、はばかられ、イツでもご訪問出来るよおに解放です。
そんな状態で、暢気な話をしてられたのも、二三十分だけやった。
(01/03/29)
その56.隣家の火災事件(7) 電気屋はん
出火当日など、次から次ぎに色んな人が入室するのです。
背広姿の眼鏡の兄ちゃんが使い捨てカメラ片手にいきなり部屋に入って来て。ただひたすらにバシャバシャ、写真を撮るだけ撮って、サッと退室してしまう。
保険屋さんが被害状況の証拠写真を撮りに来たと解釈しときましょう。
そおかと思えば、誰かが窓枠の寸法を計るのです。これは、ソレ屋はんとしときましょう。
退散された筈の消防隊員が、又やって来て、ここは窓とエアコンの室外機とホースやったなあと再確認。イヤ、エアコンもアカンことにしといてクレ。とまでは云うてない。
消防隊員だけは制服で分かりますが、それ以外は初めてのおカタばかり。服装も私服でバラバラで、誰が誰かも分かりませんし、名乗ってもくれません。
先方も、誰が入居人か分からんのやないか。この部屋を見渡しても、そこらの野次馬崩れのオッサンか、ハタマタ、ナンかの関係者が居てるだけ程度に見てるのか。
ラシキお年頃の女の子なら、一見して入居人。どかどか入室するのもイカンから、ナンか一言お断りするのやろ。
こっちにしてみたら、そこらのオッサンでも、ナンか一言くらい云うてクレ。非常識なヤツとも思うけど、ザワザワと入り乱れ、落ち着かんから、サッサとやることやって、退散してしもてクレ。
どさくさ紛れの火事場泥棒の話は聞いてます。用心するに越したことないですが、そんな広い邸宅でナシ。高がワン・ルーム・マンションではくすねるにも難しかろおぞ。
出来ることなら、壊れた白黒ノート・パソコンでも持ってけ泥棒。ホカス手間が助かるから、見て見んフリしてやる。
ディスク・トップにテレビは嵩張るし、持ち出されたらスグ分かる。机にテーブルは分解せんと部屋から出せへんし、椅子になら、私と彼が座ってる。
そこらの本では荷物になるだけで、サボテン、置き時計に絵葉書では危険を冒す値打ちもナイわい。CDソフトもスーツも押入で、万が一にも開けてみさらせ、睨み付け一網打尽にしてくれる。
次はナンやな。ナンの用事で、何処のオッサンやな。
と思たら、待ちに待ってた電気屋はんや。
マズ、ブレーカーの電圧を測定するからと、家主っさんにテスターを持たせて助手にして。
見れば、そのテスター、アナログ方式やないですか。イマやオシロスコープ並のテスターが出廻ってるのに。
されど、目安程度の点検やから、使い慣れ、持ち慣れたヤツが一番です。私が出しゃばることではナイのですな。
「電圧が下がってたらアカンのや。この線以外やったら云うてなあ。」
「兄さん、部屋の電気系統は全部切ってしもてや。」
兄さんとは私のことかいな。要するにコンセントを抜けとの指示と解釈して、外しました。
「一カ所可笑しいで。このブレーカーは何処につながってるのか知らんかなあ。」
そんなこと、知りますかいな。私が設計施工したワケでナシ。
「エエワ、エエワ。
順番に電源を入れてくれるか。それで、可笑しいのが有ったら云うてんか。」
指示どおり、やりました。パソコン、電灯、電話、全部大丈夫。
ところが、テレビの画像がアキマセン。アンテナが逝かれてるのです。
「分かった分かった。ヤッパリなあ。アトは大丈夫やろ。
イヤ、一カ所可笑しいで。ホカにもナニか使てるやろな。調べてんか。」
有った有った。台所の電熱器と小型の電気冷蔵庫。これはマンション備え付けのため、入室以来、元の電源など触ったことがナイ。
マズ、電熱器はランプ点灯で、大丈夫。冷蔵庫がヨオ分からんのです。
「音がしてへんみたいやで。壊れてるのと違うか。」
彼がそお脅かすから、ナカを覗いたり、ドアに耳を当てたりすれど、シカとは判定不可。
電気屋はんは、イラチのよおで、ナニをもたもたしてるのや。ドレドレ、ワシが診てやるからそこを退いてクレ。
冷蔵庫を移動させ、コンセントの確認だけして、
「チャンと入ってるで。異常ナシ。」
このオッサンもヨイ加減です。コンセントが入ってるから異常ナシとも云えません。かと云うて、出火元からは遠い場所。異常があったところで、火事には無関係。
そしたら、ドアに耳を当て、
「ウン、音もしてるし、大丈夫や。」
私も確認の為、ドアに耳を当てたけど、ヨオ分からん。耳鳴りでなあ。
「ナニか有ったら、イツでもやったるがな。」
その一言で異常ナシを了解した。
イヤ、チョッと待って。テレビのアンテナはドオしてくれる。
(01/03/30)
その57.隣家の火災事件(8) 周辺騒々しく落ち着かん
彼のホウも、我が家を放ったらかしもイカンから、ボチボチ戻らんとなあ。
そお云うて、消えました。
電気屋はんが云うには、テレビはアンテナのブースターがやられてた。スグには部品がナイから暫く待ってクレ。
そしたら、イツ修復出来るのかと尋ねてたら、ソバに居た家主っさんが乗り出して来て、
「このカタもここで仕事をしたはるのやから、スグにもナンとかしてあげてクレよ。」
私にしてみたら、やってくれる日時さえ分かればヨシと思てたのです。そもそも、仕事するのにテレビは要らん。その仕事さえやってナイからなあ。
かと云うて、スグに出来るのがヨイに決まってる。家主っさんから依頼するのが筋でもアル。
余計な本音を披露するのもナンですから、私は交渉の片脇で複雑怪奇な気分。
電気屋はんは、二の返事でウンそれならと、云い掛けてたのが家主っさんの、だめ押し発言が飛び出したから、お顔を立てる意味からも、ショウガナイからナンとかしたろかい。
チナミニ、この電気屋はんがマンション電気周りの設計施工をしたよおで、なかなか詳しく経験豊富で手際も早い。
まずは、部品が届けば連絡したげると云い乍ら、トリアエズの応急処置もしてくれて、もお映る筈やと、その日のウチにナンとかなったのです。
さりとて、火災直後のこと。誰がイツ入室するのやら。ノンビリ、テレビも見てられませんし、そんな気分でもナイです。
その電気系統も、一階喫茶店は店主の云うには大丈夫。シャッターも異常ナク動いてた。
店内は水浸しになったけど、什器の損傷ナシ。壁紙がうっすら焦げ、燃えた家側の木製看板が焦げたのと、表通りに突き出たビニールの日除けが変色と、境目の花壇の小さな花々も焦げてはいますが形は保ってる。よおこれで収まったなあ。このカタも精進してるのや。
ことのついでに、店主曰く。
この時期、よおやくかきいれドキ。早速、イマからでも営業出来ますやろか。
商魂逞しいけど、幾らナンでも今日一杯はアカンやろ。消防車も居てるのに。
それに反して、我が向かいの部屋はダメみたい。仮配線で裸電球が取り付けられてたで。
イヤ、くどいけど、全ての部屋は開放状態。
無論、興味津々、覗いてみたい気は山々なれど、余所さんの、しかも女の子の部屋やから、意識して避けてはいるけど、目隠しまではしてませんし、部屋を出る瞬間にも勝手に見える。
さて、全焼した家は二十七日から三日掛かりで解体され、更地になってます。
窓ガラスは二十九日に交換してくれた。
業者の話では、東側は二部屋共、火災の熱で窓枠が完全に変形。取り外しも大変。それにしても、耐火ガラスをはめ込んでたからマンション一戸が助かった。値段は少々高いけど、結果、やっといてヨカッタなあ。
エアコンは三十日の予定が延期やて。家主っさんの話では、二階と三階のことやから、足場を組んでからとなったのです。その足場を組んでる真っ最中は喧しかった。
家の解体作業も三日間連続のコンコン、カンカンでした。時折体がフワフワするから、メマイかと思えば、建物が揺れてます。
足場の組み立ては、コンコン、カンカンに、バリバリ音も加わって。発生源はマンションの壁面をドリルで穴開けしてるため。
その音も、ソコです。ソコとはまさしくソコで、我が部屋の窓の向こうに謎の人影が見え隠れする。ナニ事かとガラリと窓でも開いてみい、奇妙なお顔とお顔が遭遇鉢合わせ。双方、気絶卒倒してしまう。
私は構いませんが、あちらさんは場所柄昇天の可能性有り。よって、窓を開けることさえママならず。
さて、出火騒ぎの明くる日も、その明くる日も、数日間は家主っさんも立ち会いで、ナニかの業者がマンションの下検分。
話では、黒いススのついたままでは格好も悪い。
外壁は全面的に塗り替えで、外観だけでも新品同様に致します。足場はそれがために組んでるのです。それから、一週間は経つのです。
まだまだ、周辺騒々しく、落ち着かん。
(01/04/01)
その58.隣家の火災事件(9) 余談(1)
出火当日の夜のこと。
二男が三菱京都病院での実習を終え、中継地点と化したマンションに戻って来た。
バイクは駐車場に置いといて、ヘルメットとジャンパーはマンションに保管。一緒に車で亀岡の自宅に帰る算段です。
このトキは火災直後のこと。マンション住人は全員居てましたが、総じて物音もナク、珍しくも寂し過ぎる程に静寂。
云うてしもたら、その明くる日から大騒動。親兄弟か友人、業者か知りません。入れ替わり立ち替わり、出たり入ったり、階段をドタドタ、バタバタ、激しく走り降り。
こんなトキなら、大声もドタバタもショウガナイけど、いつものことなんや。狭いマンションのその又狭い階段と廊下での話は丸聞こえ。キンキン、ガンガン、聞きとおもナイ話を喚き散らして、五月蠅いこと。
トリアエズ、一部の荷物を何処ぞに持ち出したのか。それが二日続いて、蛻(もぬけ)の空。
持ち出すトキは、階段を激しく往来の足音だけで、声はセズ。
その前後のホウが五月蠅かった。アイツまでナンで呼んだ。そんなこと私の勝手です。
どさくさ紛れに、便利屋はんを呼び過ぎたのか。イヤ、どの部屋とは申してませんし、私の知ったことでナシ。勝手に揉めてクレ。
その嵐も過ぎ去って、イマや、居座るのは私だけ。暢気と云えば暢気です。
話を戻して、出火騒動も一段落した当日の夜のこと。
二男が戻り、小休止とジュースも飲んで、ボチボチ帰ろかなとその矢先。
物静かな階段を、これまた静かに登る人の気配アリ。足音が、ピタリと停まったのが我が部屋のマエ。
まさか、焼死されたお婆さんのご挨拶廻りでもあるまいに。あろおことか、ピンポン、ピンポン、チャイムが鳴るから、私の小さな心臓もドキリと鳴って、停止してしもた。
そんな筈はナイ。幽霊に足がナイのは周知の事実。変幻自在の幽霊ならば、窓も扉もナキも同然。出現するなら、全焼した側のヒビ割れた窓のサキからウラメシヤ。
されど、お話をしたことナイから、お顔もウロ覚えで、訪問された処で、どなた様かシカとは判別出来かねる。
イヤ、薄々は予測してたのです。部屋の明かりが皎々で、マダご在宅かとアイツが来るのやないなと。
案の定、缶コーヒーを携え、見慣れた足付き幽霊の入室です。
火事騒動、その後の四方山話の続きをしに来たのです。
されど、ここで紹介の話は彼だけの情報では有りません。家主っさんに町内会の世間話も小耳に挟んでる。イヤ、これも勝手に聞こえるだけで、話には方々に食い違いがあって、ナニが正しいかなど、知らぬ存ぜぬ、責任持たぬ。
マズは焼死されたお婆さんのこと。
ご主人は五年前に他界され、一人暮らしとは皆様オナジことを申されてます。されど、身内のことがバラバラなんや。
この筋のソコが同姓で、ご主人の遠縁なれど、他界以来、おつきあいもなくなり、仲も悪い。イヤ、あそこはナンの関係もナイはずで、姓も違うハズ。
お子さんか、ご兄弟姉妹が、遠く九州に棲むらしい。イヤ、そんなことはナイ。有るとしたなら、このご近所で、親戚つき合いしてる家もナシ。
そおかと思えば、アイツは顔を出してたやろか。さっきソコに居たハズやし、葬式次第をどおするか、相談もせにゃならぬ。などと町内会が探し廻ってた。それも遠縁で、お付き合いはナキも同然とか。
私の感覚からすると、この現象は理解に苦しむのです。京都に居た頃は、隣近所の実状など、高校生なら知ってたで。遠く離れた親戚縁者まではナンやけど、隣近所の親族が小学校区の範囲に有れば関知もしてたし、お子さんが何処に居るかも分かってた。
しかるに、家主っさんの住処は離れてますが、マンションの建つ六年前までお隣さんで、アイツもスグ近所。
このお婆さん、余程に近所つきあいをしてナカッタのか。
(01/04/02)
その59.隣家の火災事件(10) 余談(2)
そもそもこの界隈ではドコソコの親戚筋が多いのです。
嵐山と云えば、イツの頃からか、コロッケの中村屋総本店が有名になった。その中村姓が彼方此方に存在するのやて。
簡単には本店の並びにスーパーがある。そこも中村さんで、親戚筋。どの程度の濃さかは知らんけど。
全焼したお宅とオナジ姓も方々に有るし、彼と同姓のもチラホラ有る。
ほら、あそこに呉服屋はんがあるやろな。苗字が一緒で親戚やで。暇に任せて確認しに往ったり。
さりとて、お付き合いもソレ相応の親密さで、仲がヨイとも限らんがな。よって、この界隈、諸般の事情、諸説紛々相まみえ、下手なことを云わんホウが無難とか。そんなことなら、親戚筋はともかく、何処でも一緒や一緒。
親戚筋が近隣に点在してるのは、この界隈、京に田舎有りを地で行ってることにナル。
象徴的にはJR嵯峨嵐山駅の裏手の高値の畑で野菜を作り、その一部が駐車場にしたのやで。
私にも、そんな親が有ったら、大切にしてあげるのに、ナンの財産もあらへんがな。
全焼のお婆さんの家は古かった。失礼乍ら、築百年にはなろおかのボロ屋です。手入れも長年やってなさそおで、イマにも崩壊して不思議でナイたたずまい。負けず劣らずのボロ屋もそこらに散見する。
私もエラソオなことは云うてられん。お取りつぶしと相成った下京の我がご生誕から青春時代を過ごせし想い出深き住処もボロ屋でなら負けてません。
このマンションを建てるトキ、隣のボロ家も買い取ってと、そんな話も有ったのや。そおしといてくれてたら、こんなことにはならんかったのにもお遅い。
燃えてしまえば危険性も一つはなくなったけど、マダ怖いのが存在する。
彼の隣のボロ屋を示されたのはその朝方で、ヨク見れば屋根中央に穴がポカリと空いてるがな。我がボロ屋でもそれはナカッタ。カと云うて、雨でも降れば、家のナカでも傘さした。
そお云えば、私がここに来たトキ、ここのお爺さん一人、毎日々々大工仕事をやってたで。それも、昼の日中に、コンコン、ギシギシ、ガリガリ、カンカン、トントン。
周辺のことなんか斟酌せず。ただヒタスラにやってるから、その関係のお仕事かと。
たとえば、そのまま大工さん。或いは、建具屋はんか木工師と思てたのが、パタリと音がなくなった。静かになれば結構なこと。イヤ、もしかして、昇天されたか、入院か。
その静けさもイツしか当たり前となり、忘れてたけど、そのお爺さん、まだご存命やて。しかるに、嵐山のホウに引っ越され、出店をやられてる。
それは勝手やけど、ボロ屋がそのままホッタラカシで、倉庫にしてるのです。倉庫にした処で、屋根が崩れて穴ポカリ。雨が降れば、家財一式濡れ放題で畳も柱も腐ってしまう。それでもほったらかしで、困るのや。
腐るだけならお爺さんもご承知のウエで、勝手やけど、ダレも居てないから火の用心の意味からも、自然崩壊の危惧からも、見つけたら、ナンとかしてくれ。さもなくば売ってクレ。頼むのに、頑固爺がウンとは云わん。
そお簡単に、売れ云うても、ここら辺りなら、坪数百万はするやろな。十五坪と見積もって、ン千万円。
そんなことはナイ。近所の不動産屋は百万以内と云うてたで。
ホンマかいな。バブルの当時ではあるけれど、宇治の小倉でさえも、こともあろおに、我が亀岡くんだりの田舎でさえも、瞬間風速で坪百万の声が出た。痩せても枯れても京都市内で、そんなことはナイ。
さてはて、素人が値踏みをすることではナイです。お声のとおりの見積もりなら一千数百万円也。
その値段なら、買い手も数多と違うのかい。世の中にはお金持ちが多いけど、私には先立つ物はナシなれど、手だけなら挙げてみたい。
どちらにしても、近頃放火も流行ってる。亀岡の我が近隣の新築建築現場で放火騒ぎが有ったんや。ボヤ程度で事なきを得ましたが、縁起の悪いこと。施主は知ってるのか、知らんのか。知ればドオするのやろ。余所事乍ら、気にはなる。
そこだけでもナイのです。悪戯半分で、バイクに乗った中学生の悪餓鬼めが、ティッシュ・ペーパー丸め、ライターで火をつけて、そこらの家の庭先に放り込みやがるのやて。
当人は面白半分悪戯気分でも、出火して死者でも出したらドオするのや。死者ならずとも、そこの家族に火傷でもさせたら、ドオするのや。火傷ならずとも、財産資産に心に傷を負わせることにナル。
元より、放火先にナンの因縁もないならば、目撃者不在では犯人探しも難しい。
以来、建築現場は、夜には明かりを点け、周辺からでも目立たさて、我が団地周辺もパトカーが巡回してるのです。思慮分別に欠ける物騒な世間になりました。
そんなことで、ヨイ機会です。この全焼事件を盾に、隣の爺を捕まえて、ナンとかセエよなあと脅迫してやる。
それがヨイ。よからぬ餓鬼が放火でもしよったらエライこと。予期せぬ災難なら強力なる守護霊軍団が守ってくれる。
予期してる災難なら、己の知恵で避けねばならぬわい。
(01/04/03)
その60.隣家の火災事件(11) 余談(3)
ご近所の皆さんが心配されるのは、跡地が売却出来るかどおか。
ソラ、いつかは売却出来ますが、出火だけでもイヤがられるのに、主が死んでます。
せめてもの救いは、家ではナク、病院に運ばれる途中で死んだこと。
事情を知らず、或いは、気にならぬなら、一応JR嵯峨嵐山駅前通りに面した敷地で、お商売には持って来い。学生相手のマンションでも構いません。
それでも、足元見透かされて、買い叩かれて、とどのつまりが坪百万円で、十五坪なら、千五百万円也。
そこから、家屋の解体費用、隣近所の有形無形の損害賠償を差し引いて。イヤ、まだ要りようが有ります。
忘れてはならん。ご当人の葬式費用一式也。身寄りがナイなら、永代供養に至るまで。
総計安く見積もっても、土地売却代金、そっくりそのまま要るとは、単に流布されてる噂話です。
アト、生命保険がアリやナシや。一人暮らしやから、受取人がどおなってるか。
焼け跡から、保険証書でも出て来たらヨイけれど、このボロ家では火災保険はナイやろし、生命保険が出たとしたら、俄親族が沢山出現して、もめる元。
もめても、額と負債によっては、ヤッパリ勘違いと、赤の他人に変更されたり。とは内情を知らんがままに余所さんの懐具合まで心配して。
どっちみち、火事を出せば、家は焼け、家財一切消滅し、諸経費を支払うがため、土地を売却したところで、残るかどおかも定かでナイ。
残ったところで、長年の信用は灰燼に帰して、この界隈には居てられん。さりとて、お金もナシにドオするのやろ。年金が有っても、家が有ればのことで、ナイなら、家賃が大変や。
諸般の事情を加味すれば、死んでヨカッタのかも分からんで。ただし、死に方が悪過ぎる。
当然のこと乍ら、私はこのお婆さんのことは知りません。隣の家で見掛けるから隣のお婆さんやけど、道ですれ違たところで、顔さえウロ覚えやから、単なる通行人の一人です。
寒い時期なら、観光客もまばらで、扉は閉めたままで姿は見えず。観光シーズンになったから、開け出したけど、開けても、家のナカに引き籠もりで、姿を見るのはタマなこと。
さりとて、体の何処かが悪いとか、ボケてるとか、そんな様子はナイのです。至って普通のお婆さん。そんなことで、出火はナンでやろとのことですが、私には分からんことはナイ。
そもそも、性格にもよりますが、お年寄りは危ないで。
我が母もオナジよおな年頃ですが、まだ六十代後半のトキ、我が家のホット・カーペットとその下の絨毯を焦がしてる。
当時は石油ストーブで、補充したり、点火のトキの手付きが、危なっつかしい。薄々は危険かなあと予測はしてた。
結果、お見事、ストーブの焦げ跡発見。ナニをどおしたか、問いつめたところで、ご当人は知らぬ存ぜぬ。私でナイわいな。誰かホカの人がやったのやろ。誰て誰がやったのや。
兎に角、私は知らん。
腹を立てるより、犯人探しをしてるより、この程度で収まったのがこれ幸い。この機会に石油そのものをやめ、全てファン・ヒーターに切り替えた。
ファン・ヒーターなら完璧とも云えませんが、石油よりは安心してられる。
それでも、マダマダ心配は有る。
台所のガス・コンロの火。消し忘れてゲート・ボール三昧になったり、昼寝をしてしもて。
嫁はんも、出掛けるトキには火を使う用事はナキよおにと、料理は済ませてしもて、電子レンジで温めるだけにしてるのです。
母も米寿。ボケてもナイし、健康そのもの。
口だけなら、私等より数段達者で、減らず口。石油ストーブのホウが暖ったこおて、燃費も安いのになどと、抜かしやがって。一銭も払てナイくせに。
そんなことで、一人暮らしとは云わず、お年寄りには要注意。
かと云うて、アイツみたいに、安全確保の為とは云え、隣のボロ屋敷払い下げ要請の件。
資産になるとは云え、出費もン千万ではストーブ交換どころの騒ぎでナイ。
(01/04/05)